2016 Fiscal Year Research-status Report
複製終了不全モデルマウスを用いた老化と発がん機構の解析
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15K21565
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
香崎 正宙 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (90717977)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 複製 / 細胞周期チェックポイント / 発がん / 老化 / マウスモデル / 抗がん剤耐性 / ノックアウト / p53 |
Outline of Annual Research Achievements |
複製開始機序については分子レベルで詳細に解析されているが、複製終了機序についてはほとんど分かっていない。申請者らは、分子Xが複製終了の制御に関与するという仮説を立て、この仮説を裏付ける実験結果を分子・細胞レベルで確認し、脊椎動物でこの機能が保存されていることまでを明らかにしている。そこで本研究では、分子Xノックアウトマウスを複製終了不全モデルマウスとして作成し、複製終了機序が破綻することによる発がんや老化などの個体レベルでの影響を解析する。現在までに、C57BL/6系統での胎生致死性を回避するために、繁殖力が高いFVB系統マウスや、ES細胞の樹立効率がよい129x1/SvJ系統マウスを用いて分子Xノックアウトマウスの樹立を試み、129x1/SvJ系統でX遺伝子ノックアウトマウスを樹立することができた。半数以上の悪性腫瘍に癌抑制遺伝子p53に変異があることが知られ、p53欠損マウスは早期リンパ腫を含めた各種の癌を好発し、p53変異マウスでは老化症状がみられる。そこで、発がんと老化における癌抑制遺伝子p53と分子Xの関係を明らかにするために、p53遺伝子欠損及びp53とX遺伝子の二重欠損129x1/SvJ系統マウスを作成中である。これと並行して、p53とX遺伝子二重欠損のヒト細胞を用いて、ヒトとマウスで共通する発がんと老化の分子メカニズムを明らかにする予定である。また、分子X新規結合タンパクを同定するために、タグ付きタンパク質のタンデムアフィニティ精製(TAP)法による相互作用解析によって、強い相互作用因子は得られたが、弱い結合の新規相互作用因子は同定できなかった。よって今後は、複製終了不全が生じるタイミングにおける、mRNAやmicroRNAなどの発現アレイ解析によって、新規複製終了不全関連因子と経路の同定を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度と平成28年度に、それぞれC57/BL6系統とFVB系統マウスでのX遺伝子ノックアウトマウスの樹立を試み、平成28年度にFVB系統で若干の胎生致死性の軽減がみられたが、結果的に個体の樹立には至らなかった。そこで、平成28年度の途中からES細胞の樹立効率がよい129x1/SvJ系統マウスを用いて(Evans and Kaufman, Nature, 1981)、X遺伝子ノックアウトマウスの樹立を試みたところ、ようやくノックアウトマウスを樹立することができた。現在、このノックアウトマウスを増産している。以上の状況から、研究実施計画に照らし合わせ、遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
129x1/SvJ系統での分子Xノックアウトマウスが樹立できたので、今後は129x1/SvJ系統への戻し交配を数回繰り返し、世代毎にノックアウトマウス同士を交配させて、各世代の致死性の回避率を決定する。戻し交配によって致死性の回避率が逆に悪くなる可能性も考えられるが(Sah et al, Nat Genet, 1995)、その場合は、生物学的な解釈が複雑になるが、F1マウスを用いて発がんと老化実験を行う。がん抑制遺伝子p53との関係を明らかにするために、129x1/SvJ系統へのp53欠損マウスの戻し交配も並行して行っており、分子Xとp53の二重欠損マウスを作成して個体レベルで分子Xとp53との関係を解析する予定である。また、ヒト細胞を用いて分子Xとp53の二重欠損細胞を樹立し、マウスとヒトでの共通した発がんと老化の分子メカニズムを解明する。さらに、複製終了不全の全容を解明するために、mRNAやmicroRNAアレイ解析によって関連因子候補の抽出と機能評価を通して、新規関連因子の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
FVB系統及び129x1/SvJ系統マウスへの戻し交配を主に行っていたので、マウスを用いた実験が進まなかった。そのため、マウスの購入費、維持費が予想よりも下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、129x1/SvJ系統ノックアウトマウスを実験必要匹数まで増産し、研究計画通りの実験費用に充てる予定である。また、ヒト細胞でp53とX遺伝子を欠損させて表現型解析を行い、複製終了不全機能における他の新規関連因子との関係を解析するために研究費を使用する。
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