2015 Fiscal Year Research-status Report
大規模医療情報データベースの利活用による乳がん患者の精神疾患に関する研究
Project/Area Number |
15K21650
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 泉美 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20726971)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 乳がん / 精神疾患 / 医療情報データベース / リアルワールド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,全国レベルの医療情報データベースを用いて,乳がん患者の実診療下での精神疾患の罹患状況の解明と,医療経済評価,及びその際の統計解析方法を検討することである。本年度は,まず研究計画書を作成し倫理審査を申請した。本計画書の中では,乳がんだけでなく,他の7つのがんも対象に含め包括的ながん診療の実態解明を目指した。データに関連して,データ定義書,データ倫理チェック表などを作成し,データの質向上にも努めた。当該のデータセットは入手済みであり,基礎解析も完了させた。 基礎解析では約14,600人が対象患者として特定された。そのうち最も多かった患者が乳がんで約5,000人であり,大腸がん3,200人と胃がん2,300人がそれに続いた。精神科系薬剤の処方は全体で約45%であった。さらに,薬剤分類で最も処方が多かったのはベンゾジアゼピン系(BZD)薬剤で43%の処方割合だった。最も処方されていたがん種は,肺がん58%で,すい臓がん53%,肝がん47%と続いた。乳がんの処方割合は43%であり,平均的な処方割合であった。さらに,個別の薬剤に注目すると,最も多く処方されていた薬剤はBZDのゾルピデム12%であり,続いてブロチゾラム11%,エチゾラム4%で,上位のほとんどがBZDであった。 精神科系薬剤の処方に影響していた因子は,併存疾患の有無,がん種,治療(化学療法,手術,放射線療法),医療機関,家族の有無であった。併存疾患では,糖尿病,虚血性心疾患,高血圧症,脳血管障害による影響が見られた。がん種類では大腸がんに比べて,肺がんは約2.5倍,すい臓がんは約2倍,肝がんは約1.5倍,乳がんは約1.1倍,処方される傾向であった。医療機関は病院やがん診療拠点病院ではクリニックに比して処方されない傾向にあった。家族の影響はわずかであるが,家族がいる方が若干処方される傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度であり研究計画書作成とデータ入手に時間が要した。そのため,精神疾患罹患状況の検討が遅れてしまい経済評価まで研究が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎解析が終わったデータを基に,乳がん患者の精神疾患罹患(精神科系薬剤使用)に影響を及ぼす因子を探索して検討する。また,乳がん患者の経済評価に関しての検討を,これまでのわが国の先行研究(婦人科系疾患,精神疾患)を参考に実施する。
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Causes of Carryover |
データ入手に予想以上に時間を要したため,データ抽出加工やデータクリーニング及び解析補助等を計画通りに実施することが出来なかった。また,論文作成も間に合わなかったため,論文投稿に掛かる費用を執行することが出来なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データは入手済みなので,必要な部分のデータハンドリング,及び解析補助等で技術者を一次手的に雇用する予定である。また,解析を完了後は論文を作成し英文校正と,さらに論文が受理された後は論文投稿に費用を使用する予定である。
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