2016 Fiscal Year Research-status Report
膵胆管系腫瘍産生MUC1の比較糖鎖プロファイリング
Project/Area Number |
15K21667
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松田 厚志 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30722590)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 糖鎖 / レクチンマイクロアレイ / ムチン / 糖タンパク質 / バイオマーカー / 胆管がん / 膵臓がん |
Outline of Annual Research Achievements |
癌などでその発現量が上昇するとされるムチン糖タンパク質タイプ1 (MUC1) は、高度に糖鎖修飾された粘液性糖タンパク質であり、その糖含量は全分子量中、実に50%以上を占めるとされる。腫瘍生物学において、その糖鎖修飾変化は重要とされながらも、生体内MUC1糖鎖構造解析は現状の解析技術では困難であり、MUC1糖鎖を定量的に検出可能な新たな方法論が必要とされる。本研究の目的は、微量な生体試料 (組織切片) 由来MUC1糖鎖を高感度に比較解析可能な糖鎖プロファイリング法の確立と、MUC1産生腫瘍である膵臓・胆管がん手術標本を用いてMUC1糖鎖の比較解析を実施し、疾患特異的MUC1糖鎖の早出と新たな診断・治療標的薬開発への応用、及びその糖鎖変化の腫瘍生物学的役割を明らかにすることを目的とする。 昨年度までに、抗MUC1抗体、MY.1E12を用いたMUC1陽性組織切片領域から、特異的にMUC1をエンリッチし抗体オーバーレイレクチンマイクロアレイ法によるMUC1の高感度な糖鎖プロファイリング法を確立した。本法にて、MUC1を高発現している胆管がん及びすい臓がん臨床組織票本より、組織由来MUC1の比較糖鎖プロファイリングを実施した。MUC1陽性領域の確認には、MY.1E12 による免疫組織染色を実施した。免疫組織染色によりMUC1が発現している腫瘍領域をマイクロダイセクションによって組織断片を採取しMY.1E12による抗体オーバーレイレクチンアレイにより比較解析を実施した。得られた糖鎖プロファイルの結果より、統計学的解析、及び免疫組織染色によりそれぞれの腫瘍にて特徴的だったレクチン・糖鎖の選抜及び検証を実施した。各種臨床情報とのマッチングを行い、MUC1上の糖鎖変化とその臨床的意義について検証を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
共同研究先である鹿児島大学医学部病理講座より、胆管がん・すい臓がん手術標本をそれぞれ 63 例、135 例提供していただき、先ずは抗 MUC1 抗体にて免疫染色を実施し、全ての検体について MUC1 の発現解析を実施した。その結果、いずれの腫瘍においても、MY.1E12 を含む各抗 MUC1 抗体で免疫染色を実施したところ、胆管がん・すい臓がん共に 90% 以上の陽性率であった。すなわち MUC1 の発現だけでは胆管がん・すい臓がんに差はないことが判明している。これまでに、胆管がん組織標本 63 例中 21 例、すい臓がん組織標本 135 例中 50 例が MUC1 比較糖鎖プロファイリングが可能であった。得られたプロファイリングから胆管がん・すい臓がんで比較解析を実施したところ、各腫瘍で特徴的な糖鎖プロファイルが得られ、それぞれで有意に上昇するレクチンを見出すことに成功している。本結果は、選抜されたレクチンと MY.1E12 とによる蛍光二重染色でもまた同様の結果であったことから、レクチンマイクロアレイによる比較糖鎖解析の結果を裏付けるものであった。これは同じ MUC1 陽性腫瘍であっても、その上の糖鎖構造は腫瘍によって異なることを意味するものである。 また、胆管がんにおいて糖鎖プロファイルの推移と各種臨床パラメータとのマッチングを行なった結果、術後予後と相関するレクチンを見出すことに成功している。これら結果は論文として成果報告している (Matsuda A, et al. Laboratory Investigation, 2017, in press)。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに、胆管がん・すい臓がん組織由来 MUC1 の比較糖鎖解析を実施し、両腫瘍間で MUC1 上の糖鎖が異なることを見出し報告してきた。また、胆管がんでは、がんの悪性度に応じて、MUC1 上の糖鎖が変化することを見出しあるレクチンでそれを規定できる可能性を見出し報告してきた。平成 29 年度は同様にすい臓がんでの解析を実施する予定である。先ずはすい臓がんの糖鎖プロファイルより各種臨床パラメータ (ステージ、予後など) と相関する糖鎖変化を探索していく予定である。本研究は統計解析ソフトを用いたレクチンアレイのデータ解析と組織染色による検証を実施し、臨床的意義を追求していく予定である。また、組織サンプルの解析より見出された糖鎖変化について、生物学的意義を株化された培養細胞を用いて検証していく計画である。
|
Causes of Carryover |
購入予定試薬の納期が期限までに間に合わなかったため
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の予算配分が決定次第、購入予定試薬を購入する予定である
|
-
[Journal Article] Wisteria floribunda agglutinin-sialylated mucin core polypeptide 1 is a sensitive biomarker for biliary tract carcinoma and intrahepatic cholangiocarcinoma: a multicenter study.2017
Author(s)
Shoda J, Matsuda A, Shida T, Yamamoto M, Nagano M, Tsuyuguchi T, Yasaka T, Tazuma S, Uchiyama K, Unno M, Ohkohchi N, Nakanuma Y, Kuno A, Narimatsu H.
-
Journal Title
Journal of Gastroenterology
Volume: 52
Pages: 218-228
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] Serum Wisteria Floribunda Agglutinin-Positive Sialylated Mucin 1 as a Marker of Progenitor/Biliary Features in Hepatocellular Carcinoma.2017
Author(s)
Tamaki N, Kuno A, Matsuda A, Tsujikawa H, Yamazaki K, Yasui Y, Tsuchiya K, Nakanishi H, Itakura J, Korenaga M, Mizokami M, Kurosaki M, Sakamoto M, Narimatsu H, Izumi N.
-
Journal Title
Scientific Reports
Volume: 7
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-