2015 Fiscal Year Research-status Report
凸型放物面鏡を用いた全方位から観測可能なホログラフィック3Dディスプレイの研究
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15K21699
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山東 悠介 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (30463293)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 凸型放物面 / 曲面への回折計算 / 金属切削 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、凸型放物面鏡を用いることで、水平方向だけでなく、垂直方向にも完全な運動視差を有するホログラフィック3-Dディスプレイを開発するものである。本年度は、以下の通り、凸型放物面鏡の作製と放物面への回折計算アルゴリズムの開発に重点的に取り組んだ。 本用途に使用可能な凸型放物面鏡は市販されていないため自作を試みた。作製手法として金属切削を行った後、研磨処理により鏡面性を向上させた。作製した放物面素子の評価方法として、触針式形状計測装置により形状を計測し、そのデータを元に発散(収束)特性を計算機上でシミュレーションした。最終的には集光点でのビーム径を評価指標として用いた。結果として、可視光領域の光に対し、100μm以下のビーム径を達成した。本素子は一般的な光学素子としては不十分な性能であるものの、人の眼での観測を前提としている3-Dディスプレイや、本研究での試作段階においては、十分有効であると考えられる。 放物面への高速な回折計算においては、研究論文としての報告はほとんどない。平面への計算において多用される高速フーリエ変換を用いた一般的な回折計算アルゴリズムは使用することができないため、標本化定理を考慮して独自に検討を行った。基本的には、ホイヘンス=フレネルの原理を元に計算式を検討した。ただ、通常の平面とは異なり曲面上では波面の光軸方向の変化が激しいため、可視領域の光に対し、標本化定理を満たすには、莫大な標本点数が必要ということが判明した。そこでこの問題を解決するため、曲面上でのデータ量を極力削減するための回折計算アルゴリズムを考案したので、今後は実装した上で精度を検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放物面への回折計算においては、標本化定理を満足させるには、莫大な(一般的な計算機では実装不可能な)メモリが必要ということが判明したため、計算アルゴリズムの方向性を大きく変更することとなった。そのため、当初の計画段階より若干遅れている。しかしながら、データ量を大幅に削減するアルゴリズムを考案したので、翌年度においてプログラムを実装し、精度を検証する予定である。一方、凸型放物面鏡の作製においては、試作品が完成し、簡易な光学実験により発散特性が確認でき、予想以上に進捗した。従って、全体的には予定通りと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
放物面への回折計算については、引き続き開発を進める。問題として浮上した莫大なメモリ使用量については、放物面での波面分布を計算せずに、ホログラム面での回折波を直接求めるという手法を考案し、そのプログラムの実装と精度検証に重点的に取り組む。一方、光学素子の作製においては、分解能3μm程度のバイナリ型位相ホログラムの作製技術が既に構築できているため、考案した回折計算アルゴリズムを元にパターンが計算でき次第、ホログラムを作製する。また、実際に光学系を構築するために必要な各種部品(空間光変調器を含む)を購入し、試作や実験を行いながら、順次準備を進める。
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Causes of Carryover |
本年度の研究において、凸型放物面鏡の試作を重点的に取り組み、結果として仮想的な集光点で100μm以下のビーム径を得ることができ、本研究における試作品として機能すると判断した。しかし、計画当初は、自所での作製において必要な性能を得ることができなかった場合に、光学素子メーカーに特注するための予算として、40万円程度を見込んでいたが、それが不要になったため、翌年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度は、本研究において研究費の大半を使用することになる、空間光変調器を予定通り購入する。しかしながら、空間光変調器は、日々進化しており、性能によって価格も様々である。本年度からの繰越金を使用することで、本研究目的の実現により適した仕様を有する空間光変調器を購入する。
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