2017 Fiscal Year Research-status Report
発光性細胞株アレイを用いた高速PM2.5評価系の構築(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
15KK0029
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
金 誠培 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (60470043)
|
Project Period (FY) |
2016 – 2018
|
Keywords | 生物発光 / 発光プローブ / 分子イメージング / リガンド / ルシフェラーゼ / セレンテラジン / 化学物質 / 一分子型生物発光プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
化学物質により起こる代表的な細胞内分子イベントは何れも病理現象と深く関係している。本研究ではこの科研費研究により開発した「「化学物質の生理活性」可視化プラットフォーム」を活用し「化学物質による分子イベント→定量化→病理現象との相関性解明」に資する環境・医学連携研究を実施することを目的とする。このために、この分野で世界的な技術力と実績を持っているアメリカ・ス タンフォード大学医学部の分子イメージングプログラム(MIPS)と国際共同研究を実施してきた。今年度には、基礎発光材料研究と応用研究に分けて研究を実施した。生体応用を見据えた理想的な発光基質は組織透過性の優れた長波長発光をはなつことが望ましい。そのため、本研究期間中では、その一環として 、赤発光の蛍光色素付きの発光基質類を新規合成し動物細胞類に適用する研究を行った。また、発光性能改善に資する新たな人工生物発光酵素群を樹立した。これらの成果を纏めて、アメリカ化学会(ACS)のBioconjugate ChemとACS Combinatorial Chemに報告した。現在、この研究成果を基に、青色から近赤外線に一気に発光シフトする発光イメージングシステムを開発し、この発光システムをマウスの癌転移モデルに適用した研究を進行中である。また、発光基質の発光エネルギーが赤色蛍光色素(Cy5)に伝わるThrough-Bond Energy Transfer (TBET)という新概念の発光イメージング方法を開発している。 このような高い発光性能を持つ「化学物質の生理活性評価システム」を、スタンフォード大学医学部の動物実験系に積極的に適用していくことにより、高速かつ高感度で化学物質のホルモン様生理活性評価ができることを期待 している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「化学物質が持つ生理活性(ホルモン様活性や炎症誘発性など)」を評価するシステムは大変挑戦的な課題であり、前向きな結果を得ることはなかなか難しいものである。当研究では大胆にも、発光酵素の基質を合成し、それに蛍光色素を繋げることで、(1)発光 性能の向上と(2)組織透過性の高い発光を発するシステムを開発してきた。これらの成果論文は既にNature姉妹紙に掲載しており、その後続論文では、蛍光色素付き生物発光基質類と新規人工生物発光酵素の開発に関する論文をいずれもアメリカ化学会(ACS)ジャーナルに発表した。この成果により、今までできなかった、生物発光のピンポイントイメージングやマルチカラーイメージングシステムの構築ができるようになった。また、より高輝度で近赤外線で発光するイメージングシステムの開発に成功した。さらにこれらの成果をスタンフォード大学医学部の協力を得て動物モデルに適用した研究例を成果としてまとめている。今後の化学物質生理活性の高速・高感度スクリーニングへの重要な一歩であり、生体内病理現象の非侵襲的イメージングにおける革新的な研究例とも言える。上述した研究以外にも、免疫毒性物質や催奇形性化合物の発光イメージング技術も開発中であり、近い内に成果が期待できる。これらの成果を基に、スタンフォード大学医学部で動物モデルでのさらなる応用研究を進めている。このような研究成果等を踏まえ、「当初の成果以上に進展している」ものと自評する。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方向としては、当該目標としていた「環境・医学連携」により、化学物質生理活性の発光信号化から病理現象解明に至る技術的空白を埋めると共に、従来の生死判別法やレポーターアッセイ等にしか依存できなかった化学物質の生理活性評価技術の飛躍的 な進歩」を目指した研究課題を遂行する。より具体的には、今後の研究方向として、主に以下の3つのルートで当該研究を進めていく:(1)発光イメージングの基礎材料基盤を更に強化する(基礎領域)。また、このような基礎発光材料研究成果は、効果的な化学物質生理活性評価システム全体の性能改善に繋がる。そのため、前年度に続いて、より高性能な発光基質の有機合成を行うとともに、より高性能な人工生物発光酵素の開発を目指していく。(2)化学 物質の生理活性を評価する一分子型生物発光プローブの開発と性能向上を行う(基礎応用領域)。前述した基礎発光材料・酵素開発の 成果を、実際の一分子型生物発光プローブに適用することにより、性能向上を模索するとともに、プローブそのものの分子設計を最適 化することにより、化学物質生理活性のイメージング性能を改善する。(3)前述成果を生細胞・生体イメージング・8チャンネル光 検出装置等に応用する(応用領域)。このような研究戦略により、基礎領域で開発した発光酵素や基質を基に高性能な一分子型生物発 光プローブが期待できる。これらを実際にマウスモデルに適用することにより、化学物質の生理活性評価を動物や高速スクリーニング系に拡張するなど、挑戦的な研究課題の解決を目指していく。
|