2017 Fiscal Year Research-status Report
体制移行期ミャンマーにおける国軍の組織的利益の研究(国際共同研究強化)
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15KK0085
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 嘉宏 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (80452366)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | ミャンマー / 政治 / 国軍 / 政軍関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2011年の民政移管後に進んだミャンマーの政治的自由化の背景にある国軍の組織的利益の変容について多角的に検討し、また、同国の現代政治における国軍の政治的影響力を明らかにすることを目的とする。平成29年度は、当初の予定通り5月から共同研究のカウンターパートが所属するヤンゴン大学国際関係学科の客員教授として在外研究をはじめた。まず、共同研究者および当該研究機関スタッフとともに、大学図書館、国立公文書館、市内書店、古書店等を通じた関係資料の収集、政党関係者、政府官僚、ジャーナリスト、退役軍人、調査NGO職員等とのネットワーク形成を主に進めた。並行してインタビュー調査の準備を進め、合計38名に対してインタビューを行った。なかでも2011年から2015年まで大統領をつとめたテインセイン氏とその間、実質的なNo.2として政権を支えたソーテイン元大統領府大臣へのそれぞれ3時間から4時間にわたるインタビューによって得た情報は貴重である。残念なことに、現地の政治社会状況のため、国軍関係者へのインタビューは想定どおりに進まなかったが、昨今の自由化で増えている元軍人の回顧録の収集を行い、軍政時代に発行されたものも含めて約50冊を収集することができた。さらに、昨今のSNSでの情報発信を受けて、ミャンマーで最も利用されているフェイスブックに焦点をあてたデータ収集も実施した。以上の調査結果にもとづいた暫定的な成果を平成29年12月にヤンゴン大学で開催された国際会議およびで平成30年1月にタイ・バンコクで開催された国際学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は予定通りにヤンゴン大学国際関係論学科での在外研究を実施し、共同研究を実施を推進することができた。現地の政治社会状況(なかでも軍隊に対する批判的な報道の増加とSNSに対する要人の警戒感)と、共同研究者並びにその所属機関が教育省の朝令暮改の政策変更とスタッフ不足により、インタビューのアポイントメントが想定より難航したものの、共同研究者等を通じた多方面への人脈の形成により(例えば軍隊に関する調査を行っているNGOとの交流)、インタビュー対象者の拡大というアイデア(例えば将校の家族)、インタビューに代わる情報収集、データ収集の方法を見つけ出すことができた。こうした細かな調査上の工夫は在外研究を通じて蜜にコミュニケーションをとらないと不可能である。平成30年3月に予定していたセミナーについては、前年12月に共同研究機関が国際会議を開催するのに合わせて時期を変更して開催した。それまでの調査結果をまとめて暫定的な分析を加えてたものを報告した。ただ、この国際会議が複数の海外の大学とのプロジェクトが共催する会議であったため、本事業に限定したセミナーについては平成30年度に実施したいと考えている。代替要員の雇用については当初の予定通り平成29年6月から雇用をはじめて支障なく業務を進めていたが、雇用開始から6ヶ月ほどで当該代替要員が待遇のよりよい職を得たために、予定より短い11月半ばまでの雇用となった。
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Strategy for Future Research Activity |
代表者は予定通り平成30年4月末に帰国しており、平成30年度は9月まで出張ベースでの現地調査の継続を行いながら、同時並行で調査結果の分析を進める。10月以降には研究成果のとりまとめをおこなう予定である。また、昨年度のセミナー開催が想定とは違うかたちになったため、本年度にあらためて京都大学か共同研究機関で当該事業にかかるセミナーを開催する予定である。
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