2016 Fiscal Year Research-status Report
逆光電子回折現象を利用したバルク敏感性可変原子構造解析法の確立と応用(国際共同研究強化)
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15KK0167
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松井 文彦 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (60324977)
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Project Period (FY) |
2016 – 2017
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Keywords | 表面・界面物性 / 光電子回折 / 電子分析器 / 電子物性 / 非弾性散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、結晶試料から放出される電子の全方位角度分布(ホログラム)に様々な物理現象発現や固体物性の情報が記録されている点に注目し、表面磁気相転移をはじめとする表面電子物性を研究している。本国際共同研究では、実験拠点(スイス新規光電子回折ビームライン[PEARL])にて新たに見出された新規物理現象解明と光電子ホログラムの高効率投影型分析器[PESCATORA]開発を軸に、原子レベルでの表面・界面物性研究を推進することを目的とする。本年は夏から秋にかけ3カ月スイスに滞在し、共同研究を進めた。 (1)3年に一度開催されている国際会議VUVX2016がチューリッヒETHで開催された。実行委員に知己が多いこともあり、局所原子構造・電子状態の研究に関するサテライトワークショップを主催する機会を得た。チューリッヒ大学を会場に国際ワークショップを共同開催し、関連する欧米各国の研究者に呼びかけ研究交流を行った。 (2)光電子回折ビームラインの光軸・分析器調整を進め、光電子回折の共同実験を成功させた。分析器開発で得ていた知見がこの調整作業に役立ち、光軸のずれの評価と光学系最適化を行った。その結果角度分解能とエネルギー分解能の向上を達成し、信頼性のある光電子回折測定が日常的に進められるようになった。 (3)PESCATORA設置の真空ポートを決定し、それに合わせ分析器の製作を進めた。出口スリットの代わりにコリメータを用いた新原理に基づく飛行機でも可搬の手のひらサイズの小型分析器を開発・製作。単結晶グラファイトからの電子回折模様とAugerスペクトルの取得を通じ、新規分析器の実証実験に成功した。2016年7月に国際特許を申請した。 (4)エネルギー損失電子回折の理論研究を共同で進めてきたドイツハレ大学やMax Planck Instituteのスタッフらとも引き続き研究交流を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)今回受け入れ機関の担当者Dr. Muntwilerと共同開催した国際ワークショップ「Local 3D atomic and electronic structure imaging of functionally active sites 」の開催は想定以上の成功であった。二人で以前参加した表面構造に関する国際会議ICSOS-2014の議長を務めたWoodruff教授やFadley教授らをkeynote lecturerとして招いた。2017年7月にアトランタで開かれる国際会議ICSOS-2017に招待講演者として招かれている。 (2)ビームラインの調整が成功したことを受け、他のユーザーの実験も順調に進んでいる。2017年3月に実験課題申請を行い、現在審査中である。 (3)新規分析器の調整を行っている。国際特許申請PCT出願[静電レンズ、並びに、該レンズとコリメータを用いた平行ビーム発生装置及び平行ビーム収束装置]を行い、すべての項目について新規性を認める国際調査報告・見解書を頂いた。 (4)エネルギー損失電子回折のネガコントラスト模様発現機構の解明の糸口が見いだせた。MoSe2を用いた実験で光エネルギーを変化させると元素別の回折模様の比が大きく変わっていくことを見出した。また2H積層構造のステップレスの劈開表面を得ることに成功し、ネガコントラスト模様の対称性の観測から発現機構の特定につながるヒントを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)2017年3月にスイス放射光施設光電子回折ビームラインPEARLに課題申請を3件行った。現在、審査中である。8月下旬から9月上旬にかけビームタイムの希望を出している。SiC表面パッシベーション、グラフェン、酸化チタン表面の実験を予定している。前後の期間併せて2カ月ほど滞在を行う予定である。 (2)分析器の設置を進める。現在PEARLの真空ポートに合わせ直線導入ステージを入手し、この上に分析器の構築を進めている。 (3)エネルギー損失電子回折の実験データ解析ができているので論文化を進める。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Surface science at the PEARL beamline of the Swiss Light Source2017
Author(s)
M. Muntwiler, J. Zhang, R. Stania, F. Matsui, P. Oberta, U. Flechsig, L. Patthey, C. Quitmann, T. Glatzel, R. Widmer, E. Meyer, T. A. Jung, P. Aebi, R. Fasel, T. Greber
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Journal Title
Journal of Syncrotron Radiation
Volume: 24
Pages: 354-366
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Photoelectron Holographic Atomic Arrangement Imaging of Cleaved Bimetal-intercalated Graphite Superconductor Surface2016
Author(s)
F. Matsui, R. Eguchi, S. Nishiyama, M. Izumi, E. Uesugi, H. Goto, T. Matsushita, K. Sugita, H. Daimon, Y. Hamamoto, I. Hamada, Y. Morikawa, Y. Kubozono
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 36258-1-10
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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