2016 Fiscal Year Research-status Report
必須アミノ酸による食品有害細菌の増殖抑制効果:作用機構の解明と予測モデルの開発(国際共同研究強化)
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15KK0267
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小関 成樹 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (70414498)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 適合溶質 / アミノ酸 / 予測モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,非侵襲の微小電極を用いたイオン流束計測技術,Microelectrode Ion Flux Estimation(MIFE)法が発達して,動物,植物,酵母,カビ類さらには組織細胞における細胞膜機能の測定が活発に行われている。なかでも,微生物に適用したのはProfessor Rossの研究グループが2001年にShabala et al. (J. Microbiol. Methods 46: 119-129) として報告したのが世界初である。高塩分ストレス,低pHストレスといった化学的な環境条件に対する微生物の反応はMIFEで研究実績があることから,今回の申請研究で検討するD-トリプトファンの影響を解明することが大いに期待できる。MIFEによる評価は細胞膜のイオン輸送能を膜電位変化として非侵襲in situで定量評価できることから,「その細菌細胞自体において何が起きているのか?」を解明可能な点が本研究の大きな特色である。本年度は実際の実験評価系を構築して,基礎的なデータを取得しつつある。 また,Professor Rossの研究グループでは近年,微生物のストレス応答をGenomicsやProteomics といったいわゆるOmicsデータからの解析を進めており,微生物のより詳細なストレス応答機構の解明に注力している。この部分ではD-トリプトファンの微生物細胞への作用メカニズムを明らかにできるものと期待でき,基礎的な検討を始めている。 以上のように本年度はD-トリプトファンの微生物に対する作用機序の解明のための多角的な視野からのアプローチによって,明らかにしつつあり,今後の研究展開の基礎を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していたように,Microelectrode Ion Flux Estimation(MIFE)法による高塩分ストレス,低pHストレスといった化学的な環境条件に対する微生物の反応評価系の構築が順調に進んでいる。MIFEによる評価は細胞膜のイオン輸送能を膜電位変化として非侵襲in situで定量評価できることから,「その細菌細胞自体において何が起きているのか?」を解明可能な点が本研究の大きな特色である。これによって,D-トリプトファンの影響を解明することが大いに期待でき,本年度は実際の実験評価系を構築して,基礎的なデータを取得しつつある。 さらに,微生物のストレス応答をGenomicsやProteomics といったいわゆるOmicsデータからの解析を進めており,微生物のより詳細なストレス応答機構の解明に注力している。この部分ではD-トリプトファンの微生物細胞への作用メカニズムを明らかにできるものと期待でき,基礎的な検討を始めている。 また,もう一つの協力研究機関であるAristotle University of Thessaloniki, GreeceのProfessor Kostas Koutsoumanis,とはモデル構築のための理論に関して,議論を深めつつあり,来年度以降の実験結果の活用方法を明確にできている。 以上のように,本研究は概ね計画どおりに順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,Tasmania大学ではMicroelectrode Ion Flux Estimation(MIFE)法による,D-トリプトファンの影響を解明を目指して,種々の実験データの取得を目指す。また,並行して,各種Omics手法による解析の可能性を検討する予定である。 また,もう一方の研究協力機関であるAristotle University of Thessaloniki, Greeceでは各種のストレス条件における個々の細菌の反応の違い(バラツキ)を定量的に明らかにすることを検討してきている。種々の観察手法を検討しているが,蛍光顕微鏡観察でのtime lapse 撮影による逐次的な細胞レベルでの個体変化を捉える手法を食品微生物学の分野で世界で最も早くから検討しており,豊富な経験と実績とを有する。さらに,近年では遺伝子発現レベルでの個体反応のバラツキについて検討を開始しており,様々な研究手法の選択肢を有している。彼らの研究手法を採用することで,申請者ら検討しているD-tryptophan に対する個々の細菌の反応を明らかにできる可能性がある。これによって,個々の細胞レベルでの作用を解明することに繋がり,より効果的な利用方法を提示することが可能となる。
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