2016 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーの機能破綻による肝がんと転写因子Nrf2の活性化(国際共同研究強化)
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15KK0325
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田口 恵子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20466527)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | Nrf2 / 肝臓がん / 化学発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
転写因子Nrf2は抗酸化や解毒代謝に関わる酵素群の遺伝子発現を誘導する。我々は最近、ゲノム編集技術によりNrf2欠失ラットを作製し、食品中に含まれるカビ毒アフラトキシンB1の解毒代謝にNrf2が重要であることを示した。一方、Solt-Farber肝発がんモデルにおける前がん病変の病巣では、Nrf2の遺伝子変異が高頻度に見出された。これまで、Nrf2欠失マウスを用いた化学発がんモデルにおいて、Nrf2は化学発がん物質の解毒代謝を促進して発がんを抑制することが報告されている。しかし、Solt-FarberモデルやアフラトキシンB1による肝発がんはマウスでは再現できないため、これらの肝発がんにおけるNrf2欠失の作用は検討されていなかった。そこで本研究では、Nrf2欠失ラットに2つの化学肝発がんモデル(Solt-Farber・アフラトキシンB1)を適用して、Nrf2による化学発がん剤の解毒代謝と、腫瘍におけるNrf2変異とNrf2の活性化を調べ、化学発がん剤による腫瘍形成におけるNrf2の役割を明らかとすることを目的とした。 本年度、カリアリ大学・Columbano教授の研究室にて、Solt-Farberモデル作製において必要な実験技術(部分肝切除術、レーザーマイクロダイセクション顕微鏡)を習った。マドリード自治大学・Cuadrado教授の研究室では、Nrf2の活性制御に重要なβ-TrCPによるNrf2のユビキチン化分解系について議論した。ピッツバーグ大学・Kensler教授の研究室では、アフラトキシンB1による発がんラット長期観察実験について、そのプロトコール作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年間で3つの渡航先を訪問し、それぞれの研究者とNrf2とがん研究について議論するができた。最初の訪問先であるカリアリ大学では、Solt-Farberモデルの一部である部分肝切除術と、レーザーマイクロダイセクション顕微鏡による凍結切片上の腫瘍部の切り出しからRNA抽出までを習った。早速この手法を取り入れて、肝臓がんモデルマウスの腫瘍部においてNrf2標的遺伝子であるNqo1の発現が上昇していることを明らかとした。マドリード自治大学では腫瘍におけるNrf2活性化メカニズムについて議論した。ピッツバーグ大学ではNrf2欠失マウスにおける門脈体循環シャントの判別方法について習った。ジョンズホプキンス大学ではアフラトキシンB1代謝物を解析する質量分析器を視察し、今後行うアフラトキシン長期投与条件と解析方法について議論した。
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Strategy for Future Research Activity |
アフラトキシンB1投与ラットを長期間観察して、野生型とNrf2欠失ラットにおける腫瘍形成の有無を評価する。グルタチンS-転移酵素P(GSTP)の発現は、化学発がんモデルラットにおける前がん病変マーカーとして利用される。GSTPはNrf2の標的遺伝子の1つであるため、Nrf2欠失ラットではGSTP陽性の前がん病変は出現しないことが予想される。そこで、GSTP陽性前がん病変と、実際の腫瘍形成に相関があるか否かを評価する必要がある。そのために、アフラトキシンB1の連続投与を開始して、1年後の腫瘍形成モデルラットを作製する。アフラトキシンB1投与中の尿サンプルを回収して、ジョンズホプキンス大学にてアフラトキシンB1代謝物を解析する。
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[Journal Article] p62/Sqstm1 promotes malignancy of HCV-positive hepatocellular carcinoma through Nrf2-dependent metabolic reprogramming2016
Author(s)
Saito T, Ichimura Y, Taguchi K, Suzuki T, Mizushima T, Takagi K, Hirose Y, Nagahashi M, Iso T, Fukutomi T, Ohishi M, Endo K, Uemura T, Nishito Y, Okuda S, Obata M, Kouno T, Imamura R, Tada Y, Obata R, Yasuda D, Takahashi K, Fujimura T, Pi J, Lee MS, Ueno T, Ohe T, Mashino T, Wakai T, Kojima H, Okabe T, Nagano T et al.
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Journal Title
Nature Commun
Volume: 7
Pages: 12030
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Nrf2 activation-acquired Liver cancer2017
Author(s)
Keiko Taguchi, Masayuki Yamamoto
Organizer
Closed seminar at Profs. Bruce Freeman & Thomas Kensler’s laboratories in University of Pittsburgh
Place of Presentation
Pittsburgh, USA
Year and Date
2017-03-07
Int'l Joint Research / Invited
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