2017 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーの機能破綻による肝がんと転写因子Nrf2の活性化(国際共同研究強化)
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15KK0325
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田口 恵子 東北大学, 医学系研究科, 講師 (20466527)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | Nrf2 / 肝臓 / 化学発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
転写因子Nrf2は抗酸化や解毒代謝に関わる酵素群の遺伝子発現を誘導する。我々はこれまでに、食品中に含まれるカビ毒アフラトキシンB1の解毒代謝にはNrf2が重要であることをNrf2欠失ラットを用いて示している。ヒトにおけるアフラトキシンB1の慢性曝露は、肝臓がんを引き起こすことが知られており、これは実験動物としてラットにおいてよく再現される。そこで、アフラトキシンB1による肝臓がんの発症におけるNrf2の必要性を調べるため、野生型およびNrf2欠失ラットにアフラトキシンB1を反復投与した。アフラトキシンB1の投与スケジュールは、Kensler教授(ピッツバーグ大学・ジョンズホプキンス大学)と議論の上、決定した。 Nrf2欠失ラットは、野生型ラットでは毒性を示さない投与量に対して非常に脆弱性を示し、2週間の連続投与後に大半が死亡した。生存した個体を解析すると、野生型ラットとは異なり、Nrf2欠失ラットでは線維化が亢進して肝硬変を発症することが分かった。肝硬変は肝臓がんを引き起こす原因になることが知られており、ヒトにおけるアフラトキシンB1の慢性曝露は肝硬変を引き起こすことが知られている。しかしこれまでに、アフラトキシンB1を投与した野生型ラットでは肝硬変は観察されていなかった。Nrf2欠失ラットの肝臓では、アフラトキシンB1を十分に解毒することができず、正常肝細胞が死滅して、肝星細胞の活性化により線維化が亢進したと考えられる。アフラトキシンB1を投与した野生型ラット肝臓におけるNrf2の活性化と合わせて、肝硬変を発症するNrf2欠失ラット肝臓の詳細も今後調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アフラトキシンB1反復投与実験を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アフラトキシンB1投与ラットから採取した尿におけるアフラトキシンB1代謝物をジョンズホピキンス大学にて測定する。アフラトキシンB1投与後に出現するGSTP陽性前がん病変や肝臓がんにおけるNrf2遺伝子変異やNrf2の活性化を評価する。
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