2018 Fiscal Year Research-status Report
精緻な神経回路を作る、個々のニューロン識別機構(国際共同研究強化)
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15KK0331
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
金子 涼輔 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40390695)
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Project Period (FY) |
2016 – 2019
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Keywords | プロトカドヘリン / 小脳 / 遺伝子改変マウス / オランダ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では仮説「同じPcdhを発現するニューロン同士で神経回路を作る」の検証を進めている。具体的には、マウス小脳をモデル解析系とし以下(i)(ii)(iii)を検討している。(i)Pcdh欠損により神経回路が異常になるか? (ii)Pcdh欠損により脳機能が異常になるか? (iii)神経回路を構成するニューロン群におけるPcdh発現は同一か?本年度の本国際共同研究では、下述のように上記(i)(ii)(iii)が大きく進展した。 上記(i)Pcdh欠損により神経回路が異常になるか?について小脳顆粒細胞に着目した。そのため、小脳顆粒細胞にて遺伝子発現を操作する手法を立ち上げた。電気穿孔法にて蛍光タンパク質cDNAを導入したところ、目的どおり、小脳顆粒細胞を蛍光標識できた。 上記(ii)Pcdh欠損により脳機能が異常になるか?を精査した。Pcdhが機能するニューロンタイプの同定を目的として2種類の細胞種特異的Pcdh欠損マウス(小脳抑制性ニューロンおよび顆粒細胞を標的)を作製・解析した。その結果、顆粒細胞におけるPcdhは、運動学習へ関与するものの、基礎運動制御への影響は小さいことが明らかとなった。また、小脳抑制性ニューロンにおけるPcdhは正常な運動学習能の発達に必須であることが示唆された。 上記(iii)神経回路を構成するニューロン群におけるPcdh発現は同一か?をPcdh発現細胞可視化マウス(蛍光タンパク質ノックインマウス)を用いて解析した。具体的には、小脳においてPcdhの確率的発現が見られる細胞タイプを調べた。その結果、ミクログリアや血管以外の細胞タイプ(プルキンエ細胞、顆粒細胞、抑制性インターニューロン、バーグマングリア、アストロサイド)にてPcdhの確率的発現が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目的は仮説「同じPcdhを発現するニューロン同士で神経回路を作る」の検証である。これまでに以下を明らかにした。 (i)Pcdh欠損により神経回路が異常になるか?。小脳におけるPcdh機能を調べるため、小脳にてPcdhを欠損させた遺伝子改変マウスを作製・解析した。その結果、Pcdhが小脳形成に関わることが明らかとなった。課題(ii)にて、小脳顆粒細胞におけるPcdhgが運動学習に寄与することが示されたため、小脳顆粒細胞にて遺伝子発現を操作する手法を立ち上げた。電気穿孔法にて蛍光タンパク質cDNAを導入したところ、目的どおり、小脳顆粒細胞を蛍光標識できた。 (ii)Pcdh欠損により脳機能が異常になるか?。小脳のほぼ全てのニューロンタイプにてPcdhを欠損させた遺伝子改変マウスを作製・解析した結果、Pcdhgは基礎運動機能や運動学習の発達に寄与することが明らかとなった。次いで、Pcdhが機能するニューロンタイプの同定を目的として2種類の細胞種特異的Pcdh欠損マウス(小脳抑制性ニューロンおよび顆粒細胞を標的)を作製・解析した。その結果、顆粒細胞におけるPcdhは、運動学習へ関与するものの、基礎運動制御への関与は少ないことが明らかとなった。また、小脳抑制性ニューロンにおけるPcdhは正常な運動学習能の発達に必須であることが示された。 (iii)神経回路を構成するニューロン群におけるPcdh発現は同一か?を解析する為に必要となるPcdh発現細胞可視化マウス(蛍光タンパク質ノックインマウス)を作製した。本マウスでは、個々のPcdhアイソフォームを発現する細胞を蛍光にて可視化できることを明らかにした。本マウスを用いて小脳におけるPcdhの確率的発現が見られる細胞タイプを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2018年度に得られた結果を足がかりとして研究を大きく推進させる。具体的には、顆粒細胞特異的Pcdhg欠損マウスおよび小脳抑制性ニューロン特異的Pcdhg欠損マウスにて見いだした「小脳機能の低下」をより精査する。そのため、以下の方策で進める。 (1)顆粒細胞特異的Pcdhg欠損マウス。以下3点を調べる。1A: 運動機能以外の小脳機能への顆粒細胞Pcdhg関与、1B: 顆粒細胞におけるPcdh発現、1C: 顆粒細胞の形態。具体的には、1A: 自閉症様症状を調べるための行動実験4種(オープンフィールド試験、T迷路試験、ビー玉埋め試験、3部屋社会行動試験)を行う。1B: Pcdh発現細胞可視化マウスを用いて発生過程の顆粒細胞におけるPcdh発現を調べる。1C: 電気穿孔法等を用いて顆粒細胞特異的Pcdh欠損マウスの顆粒細胞の軸索や樹状突起形態を解剖学的に調べる。 (2)小脳抑制性ニューロン特異的Pcdhg欠損マウス。本マウスの小脳および小脳への入出力回路がどのような異常を定するのかを解剖学的に調べる。具体的には、固定した脳より切片を調製し、免疫染色等によりシナプス関連分子の局在を調べる。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Targeted expression of step-function opsins in transgenic rats for optogenetic studies.2018
Author(s)
Igarashi H, Ikeda K, Onimaru H, Kaneko R, Koizumi K, Beppu K, Nishizawa K, Takahashi Y, Kato F, Matsui K, Kobayashi K, Yanagawa Y, Muramatsu SI, Ishizuka T, Yawo H.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 8
Pages: 5435
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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