2015 Fiscal Year Research-status Report
高齢者法の確立に向けて-学際的研究による高齢者特有の法的課題の究明
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15KT0002
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
関 ふ佐子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30344526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻庭 涼子 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20362808)
西村 淳 北海道大学, その他の研究科, 教授 (20746523)
原田 啓一郎 駒澤大学, 法学部, 教授 (40348892)
鈴木 ゆめ 横浜市立大学, 大学病院, 教授 (70236024)
柳澤 武 名城大学, 法学部, 教授 (70363306)
川久保 寛 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (90706764)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 高齢者法 / ネオ・ジェロントロジー / 社会保障法 / アメリカ / イギリス / ドイツ / フランス / EU |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、第一に、高齢者法研究会を2ヶ月に1度開催した(平成27年4月23日、6月26日、9月10日、10月30日、12月21日、平成28年2月23日)。研究会では、研究者と実務家が報告する形とし、研究者は各人が研究する法学・医学の問題関心を報告し、実務家は実務において抱える課題を報告し、実態に即した高齢者特有の法的課題に関し、参加者の認識の共通化を図った。例えば、4月の第5回研究会では、研究協力者の本間郁子氏が「特養ホームにおける人権を3つの課題から考える」というテーマで報告し、研究分担者の原田啓一郎氏が「生活施設の利用者をめぐる諸問題とその論点-本間報告を受けて」という報告をした。 第二に、高齢者法の比較法研究として、研究分担者の西村淳氏が、平成27年9月にイギリスで現地調査を行った。日本とイギリスの高齢者介護制度について、多元化する中での公的責任の所在という問題意識を踏まえて比較するため、新たにCare Act 2014が成立したイギリス・ゲーツヘッド市を訪問し、アセスメント、ケアプランの作成、利用者参加と地域計画などについて、自治体担当者等からヒアリングを行った。また、ロンドン大学キングズカレッジ老年学研究所を訪問し、イギリスにおける老年学の現状と、その中における高齢者法学の位置づけについて、Anthea Tinker教授・前所長からヒアリングを行った。 第三に、国内では、高齢者が多く法的課題も山積している東日本大震災の被災地を、高齢者法研究会に参加する実務家などと一緒に視察した。原発被災者のなかでも高齢者の被災状況にターゲットをおき、社会福祉協議会や養護老人ホームを視察し、また、富岡町3.11を語る会の会員などからヒアリングを行ったほか、福島原発事故被災地などを視察した。震災において、高齢者の被害が他より甚大となった現状を視察し、その法的課題を探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、第一に高齢者法研究会を2ヶ月に1度開催する計画をたてていたところ、予定どおりこれを開催し、毎回、活発な議論をすることができた。1年たち、研究会における報告の手法も確立し、研究会が順調に開催されるようになってきた。また、高齢者法に関する分野に造詣の深い研究者や実務家を研究会に招聘した。例えば、平成27年9月10日は、信州大学の島村暁代氏が「高齢期の所得保障」について、実務家として社会保険労務士の山本臣治氏が「高齢者の遺族年金」について報告した。2015年12月21日は、人事院の本田達郎氏が「高齢者医療-その財源構造と終末期医療をめぐる課題-」について、弁護士の檜垣智子氏が「高齢者の財産管理」について報告した。また、2016年2月23日は、同じ特設分野研究(ネオ・ジェロントロジー)にある別の科学研究費を得ている研究者であり、研究代表者交流会で面識を得た帯広畜産大学の岡崎まゆみ氏が「高齢者の内縁関係解消をめぐる財産分与について」報告し、科学研究費交付の意図に即した形で研究の垣根を広げることができた。同日は、弁護士丸尾はるな氏が「高齢者をめぐる法律相談」について報告したほか、研究代表者の関ふ佐子が「Starting Ending Note」について報告した。 第二に、比較法研究を計画していたところ、各研究者がアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、EUについて文献をもとに研究を進めた。また、イギリスで現地調査を行うことにより、イギリスにはSolicitors for the Elderlyはあるものの、legal gerontologyという概念がないという点などを明らかにすることができた。 海外の研究者との連携としては、Nina A. Kohn教授(Syracuse University College of Law)を中心にメールで意見交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、第一に、引き続き高齢者法研究会での研究を基軸に研究を進めていく。2か月に一度、充実した研究会を重ねる。昨年度は、まずは問題関心の共通化をはかり、高齢者法とは何かという点について共通認識を得ていくために、各人が自身の関心分野を報告した。今年度は、日本における高齢者法の特徴を明らかにしていくことを視野に、研究者と実務家とで共同して同一の問題を研究報告するなど、研究報告の内容をより工夫していく予定である。 第二に、本研究のメンバーで国内の高齢者施設の実態調査を行い、とりわけ高齢者施設の監査とその課題について研究する予定である。 第三に、研究の一部をHPにおいて公表していくことに力を入れたい。昨年度来、高齢者法研究会の前に、科学研究費のメンバーで、毎回一時間半ほど本研究の研究内容について協議を進めてきた。とりわけ、HP「高齢者法Japan」を構築すべく協議を重ねてきた。この成果として、今年度中には、各人が記事を執筆し、HPを公表したいと計画している。 研究者による研究テーマに関するHPを作り、それにより研究成果を発信していくという手法を試みるために、当初の予定よりもHP作成の外注経費とHP構築のための人件費に予算を割く予定である。 第四に、今年度は、比較法研究として、各人が文献による研究を進めるほか、研究分担者の川久保寛氏がドイツに現地調査に行く予定である。 第五に、海外の研究者との連携を進め、Aging, Law, and Society Workshopでの報告可能性などを探っていきたい。
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Causes of Carryover |
科学研究費の採択が7月であったことから、研究の開始が遅れた研究分担研究者などもあり、全般的に予算の執行が遅くなった。 貴重な研究費であり、無為に使用するのではなく必要な経費に節約しながらあてていくという方針で予算を執行してきた。こうした方針のもと予算を執行できる、次年度に予算を繰越せる基金であることが有り難い。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、HPを構築するための外注経費やHP構築に必要な人件費に予定よりも多くの予算を割きたいため、研究代表者が繰り越した予算はそれらに充当していく。 各研究分担者は、研究が起動にのってきたことから、順次予算を執行していく予定である。
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Research Products
(15 results)