2017 Fiscal Year Research-status Report
高齢者法の確立に向けて-学際的研究による高齢者特有の法的課題の究明
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15KT0002
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
関 ふ佐子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30344526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻庭 涼子 神戸大学, 法学研究科, 教授 (20362808)
西村 淳 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (20746523)
原田 啓一郎 駒澤大学, 法学部, 教授 (40348892)
鈴木 ゆめ 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 教授 (70236024)
柳澤 武 名城大学, 法学部, 教授 (70363306)
川久保 寛 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (90706764)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 高齢者法 / アメリカ / ネオ・ジェロントロジー / 高齢者施設 / 社会保障法 / 労働法 / 人生100年時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、第一に、高齢者法研究会を当初は2か月に1度、後半は1か月に1度開催した。研究会では、研究者と実務家が報告する形とし、研究者は各人が研究する法学・医学の問題関心を報告し、実務家は実務において抱える課題を報告し、実態に即した高齢者特有の法的課題に関し、参加者の認識の共通化を図っている。こうした研究により、高齢者をめぐる法的課題に関する実務の限界を探り、何が高齢者に特有の法的課題であるのかを探求している。 第二に、高齢者法の比較法研究として、研究代表者の関ふ佐子、研究分担者の原田啓一郎および柳澤武が平成30年3月にアメリカで実態調査を行った。高齢者法の中堅の研究者としてアメリカで高齢者法の法分野の発展にあたって活躍しているNina A. Kohn教授と具体的な意見交換を行うためにシラキュース、高齢者法の研究・教育拠点であるCenter for Excellence in Elder Lawのあるステットン大学においてRebecca C. Morgan教授などと意見交換するためにフロリダを訪問した。このほか、実態調査として、各種CCRC(Continuing Care Retirement Community/長期ケア退職者コミュニティ)、ホスピス、高齢者法を専門とする法律事務所を訪問し、実務家と意見交換しアメリカの実態を調査することができた。 第三に、研究成果を公表する媒体として、HP「高齢者法Japan」を完成させ、これを公開した(elderlawjapan.ynu.ac.jp)。これにより、高齢者法研究会の動向を開示するほか、高齢者法をめぐる国内の情報として、関連する法律、文献を各領域ごとにまとめ、高齢者をめぐる裁判例情報を厳選して紹介し、各視察報告を活動レポートとして公開することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高齢者法研究会は、平成29年5月22日、7月31日・8月1日、9月28日、12月14日、平成30年2月22日・23日、3月29日に開催した。本研究の成果は平成31年5月の社会保障法学会のシンポジウムとミニシンポジウムで報告予定となった。これに向けて、7・8月と2月は合宿を行い、その後は月に1度研究会を開催している。学会報告に向けては、オンラインでの研究打合せも定期的に行っている。さらに、研究会ではスカイプによる参加を可能としたため、全国の研究者や実務家の参加が容易になった。 アメリカでは、シラキュースにおいてKohn教授と度重なる意見交換をして、高齢者法の定義、高齢者特有の課題などについて貴重な知見を得られた。シラキュース大学ではMary H. McNeal教授から高齢者法クリニックの実践についても話を聞いた。高齢者法を専門とする弁護士、裁判官、学生も含めた意見交換も行なった。また、シラキュース大学では、老年学と高齢者法の研究者が連携して研究しているため、老年学の研究者であるJanet Wilmoth教授, Merrill Silverstein教授, Doug Wolf教授とも、Kohn教授も含めて意見交換した。この他、CCRCであるLorettoを視察し、元ホスピス看護師のLeah Yonker氏からホスピスの実態を伺った。フロリダでは、高齢者法を専門とする、Rebecca C. Morgan教授やRoberta K. Flowersと意見交換した。加えて、CCRCであるFountains、Freedom Square、Westminster Shors、デイケアセンターであるSunshine Center、Suncoastホスピスを視察した。さらに、高齢者法の専門弁護士であるCharlie Robinson 弁護士などと研究と実務の連携について意見交換をした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、研究の最終年度であるため、これまでの研究を掘り下げ、研究成果をまとめていく作業に集中する。 本研究全体の成果は、平成31年5月の社会保障法学会のシンポジウムとミニシンポジウムで報告する予定となっており、それに向けた準備作業を進めていく。シンポジウムのテーマは、「社会法における高齢者特有の法的課題-高齢者法の視角から(仮)」、ミニシンポジウムのテーマは、「高齢期の意思決定支援の実務とこれから(仮)」を予定している。 さらに、研究成果は書籍としてまとめ、中央経済社から平成31年度に出版する予定となった。この研究書は、学会報告よりさらに多くの高齢者法研究会のメンバーが参加する形で、研究者と実務家の連携の成果としたいと企画している。この研究を、高齢者特有の法的課題に特化して体系的な研究を行う「高齢者法」という新しい法分野を日本において確立するための土台としていきたい。そこで、全体を通して統一的な研究書を作っていくために、研究会を基盤にして研究を進めており、本の執筆メンバーは一回以上研究会にて報告する予定である。また、学会報告と本の執筆作業を進めるために、本年度も月に1度の研究会のほか、2度の合宿を行いたい。 比較法研究としては、研究費に余力があれば、本年度の最後に、高齢者法研究会のメンバーがアメリカの高齢者法の知見に直接触れられるよう、シラキュース大学のKohn教授やステットン大学のFlower教授を研究会に招聘したいと計画している。 さらに、本研究の比較法研究の成果として、とりわけ終末期医療について、平成30年6月3日に比較法学会(関西大学)で、「高齢者の医療と介護」というテーマで、関がアメリカについて、川久保がドイツについて報告予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、研究の集大成として、上記の通り、シラキュース大学のKohn教授やステットン大学のFlower教授を高齢者法研究会に招聘したいと考えている。これの費用にあたるため、平成29年度は人件費を節約した。
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Research Products
(17 results)