2016 Fiscal Year Research-status Report
食料循環系の把握に基づいた持続可能な放射能汚染対策の確立
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15KT0023
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
小山 良太 福島大学, 経済経営学類, 教授 (60400587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 秀樹 福島大学, うつくしまふくしま未来支援センター, 特任准教授 (70613230)
野川 憲夫 福島大学, うつくしまふくしま未来支援センター, 特任教授 (60208311) [Withdrawn]
林 薫平 福島大学, 経済経営学類, 特任准教授 (30739355)
則藤 孝志 福島大学, 経済経営学類, 特任准教授 (80739368)
小松 知未 北海道大学, 農学研究院, 講師 (30634977)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 放射能汚染 / 低減対策 / 検査体勢 / 風評被害 / 費用対効果 / リスク評価 / リスク対策 / 持続可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、原発事故から6年間が経過した今日、安全・安心な食料を生産・流通・消費するための放射能対策を総括し、その成果と課題を検証しながら、「緊急時対策」から「恒久的対策」への質的転換を図るための視座を獲得し、持続可能で体系立った放射能対策を構築することである。 2016年度は全国47都道府県の消費者を対象とした風評被害に関するwebアンケートや、福島県内外の生産者、消費者、行政、JA、食品関連企業などの幅広いヒアリング調査などを行い、放射能汚染対策の現状、課題を把握するとともに、事故から6年間の変容も把握し、今後の放射能汚染対策のあるべき姿を検討した。また学校給食で福島県産品を扱う際の対応やコンフリクトの調査も行った。また台湾人や韓国人などの食品の安全問題を扱う専門家に日本の食品の輸入についての社会情勢、認識などをヒアリングを行い、国際的観点からの風評被害の構造を把握した。 また福島県内各地で採取された約600検体の土壌を用いて、ソバ・スプラウトを栽培し土壌のリスク評価を行う実験を行うとともに、大気中の放射性物質のモニタリングを南相馬市で継続し、多様なリスクを想定した放射能汚染対策の検討を進めている。特に放射能汚染対策における①物質循環過程、②食料生成過程、③生産消費課程、を個別分断的に扱わず、放射能汚染対策の「連続性」や「連動性」を担保する仕組みを具体的に検討する。具体的には農地の汚染マップや食品検査の結果を連動させて、生産工程管理の考え方から放射能汚染対策を位置づけなおし、ネガティブな対策からGAPなどのポジティブな対策への転換を志向する中で、新たな福島農業の復興のあり方を提言する。またJAの営農指導との協働を深め、産地全体での放射能汚染対策を、生産者、JA、行政が一体となって進めてゆくモデルの構築も目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射能汚染対策について、技術的側面、ならびに社会経済的側面からの総括に向けた幅広い情報収集を進めてきた。また全国47都道府県を対象とした風評被害調査も行い、過去の調査データとの比較から風評被害の経年変化を明らかにし、具体的提言を見据えた分析にも着手している。また台湾・韓国・中国・アメリカ・ベトナム・ベラルーシ・ドイツ人への風評問題に関するヒアリングを行い、風評問題の国際的対応に関する調査も新たに始めた。東京オリンピックを視野に、従来の放射能汚染対策が、GAP等の生産工程管理に組み込む機運も見られ、こうした動きに対するアクションリサーチも始めていた。 土壌や土質によるセシウムの移行リスクの評価に基づき、全量全袋検査や低減対策を継続しなければならない生産環境の特定、および営農指導のあり方に関する検討を、多様な地域の生産者・消費者・流通業者への調査を行うとともに、県内自治体や県内JAなどと討議を進めている。 従来対策が行われてこなかった福島県外の放射能汚染地における放射能汚染対策のあり方についても、栃木県、宮城県、千葉県などを事例に調査を進め、福島で培ったノウハウの普及を目指す取り組みにも着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度実施した全国47都道府県のWebアンケート調査の分析を進め、風評被害の経年変化の精緻な解析を試みる。また東京オリンピックを視野に、従来の放射能汚染対策が、GAP等の生産工程管理に組み込む動きが新たにみられるが、風評問題を国際的観点からの分析を強化し、実行力ある対策を描いてゆきたい。 持続可能な放射能汚染対策のあり方の検討については、技術的側面だけでなく、社会経済的観点からの実行性を評価し、今後の放射能汚染対策のあるべき姿を描く。特に ①リスク評価に基づいた放射能汚染対策の合理化、②風評被害対策、③実効力ある生産工程管理、営農指導、のあり方を、各メンバーがそれぞれ推進してきた研究成果を集約し、統一的かつ体系だった視点から検討を行う。 福島の原子力災害は、3月という農閑期に生じたこと、また主な汚染地が阿武隈山地の花崗岩地帯を中心に生じた特殊性を鑑みながら、今後、国内外で農繁期に過酷な放射能汚染が生じた場合、あるいは花崗岩以外の地質が広がる地域でのリスク評価などを試みる。
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Causes of Carryover |
ゲルマニウム半導体検出器による測定を本学で実施することができ、当初計上した分析に伴う外注費が不要となった点が大きい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
申請時の計画に即した利用を進めるとともに、新たにベラルーシやウクライナにおける放射能汚染対策に関する国際的調査に伴う旅費に充てる計画としたい。
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Research Products
(13 results)