2017 Fiscal Year Research-status Report
食料循環系の把握に基づいた持続可能な放射能汚染対策の確立
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15KT0023
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
小山 良太 福島大学, 経済経営学類, 教授 (60400587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 秀樹 福島大学, うつくしまふくしま未来支援センター, 特任准教授 (70613230)
野川 憲夫 福島大学, うつくしまふくしま未来支援センター, 特任教授 (60208311) [Withdrawn]
林 薫平 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (30739355)
則藤 孝志 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (80739368)
小松 知未 北海道大学, 農学研究院, 講師 (30634977)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / トリチウム / 全量全袋検査 / 低減対策 / 風評認識 / リスク評価と制御 / 国際調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、既存の放射能汚染対策の『総括』と『検証』を行い、緊急時対応から恒常的対応への転換を視野に入れた持続可能で体系立った放射能汚染対策の提案を図ることを目的としている。主な研究実績は以下である。 (1)コメのセシウム吸収リスクの評価とこれに基づいた生産工程管理の考え方の検証:県内600か所の土壌を用いて実施されたコメのセシウム吸収リスクの評価実験の知見に基づいて、低減対策や放射能検査を欠かしてはならない環境条件を検討した。そして放射能汚染対策が機能不全に陥る原因を、食料循環系における①物質循環過程、②食料生成過程、③流通消費過程が、それぞれ個別分断的に捉えられ、対策の中での「連続性」や「連動性」が欠如したことによるという仮説を検証し、全量全袋検査やコメのセシウム低減対策のあり方を具体的に検討した。 (2)環境モニタリングのあり方の検討:土壌中の放射性セシウムのスクリーニング計測法の評価と提案を行った。また大気中のダストモニタリングの実績を踏まえ、大気降下物を視野に入れたコメの安全対策の検討をした。 (3)国内外の風評認識調査、国際調査の実施:WEBアンケートによる47都道府県、ならびに海外の風評認識調査を行い、福島事故の情報の心理的距離による認識の差異を明らかにした。またベラルーシ・ウクライナを訪問し、チェルノブイリ事故から30年が経過した両国の経験から学び、長期的視野からの放射能汚染対策のあり方を調査した。またアメリカのスリーマイル島を訪問し、トリチウム問題の対処や住民説明の事例などを調査した。これを踏まえて風評意識の払拭、ならびに適切な情報提供のあり方などの検討と提言を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生産者・消費者、農協・漁協・林協・生協、行政などを対象に、放射能汚染対策に関わる情報収集を幅広く行い、放射能汚染対策の総括と検証に向けた取り組みを進めている。また国内外の風評被害調査・風評認識調査などを継続的に行い、変化と進展が著しい放射能汚染対策に対して時宜を得た分析や提言をした。 またコメを取り上げ、リスク評価に基づいて低減対策と検査体勢のあり方を検討し、生産工程管理の考え方に基づく持続可能な放射能汚染対策のあり方を検討した。本研究は論文として公開予定である。土壌中の放射性セシウム濃度の簡易計測法についても検討し、これを社会的に実装する取り組みにも着手し、帰還が進む地域(飯舘村・葛尾村など)の支援を進めている。 そしてコメの全量全袋検査、低減対策、汚染水問題などに対しては、政策決定のプロセスにも参加し、研究代表者が専門的見地から具体的提言を行っている。また政策策定プロセスを踏まえて、現場へのフィードバックも行い、持続可能な放射能汚染対策の実践的な構築・展開を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
福島原発事故から10年を迎える2020年度を視野に入れ、既存の放射能汚染対策の『総括』と『検証』を進めながら、持続可能な放射能汚染対策を提示したい。具体的には、膨大な費用や手間がかかる放射能汚染対策の「コスト低減」と、限られたリソースで「確実性のある対策」を構築することが、放射能汚染対策の持続性向上に重要だと考えている。 福島県外にある放射能汚染地域(ホットスポット)の放射能汚染対策が軽視されているが、風化がすすむ中で、抜かりない対策を講ずることが不可欠であり、東日本全域での放射能汚染対策の高度化に向けた提言をしたい。また我が国の経験を日本に留めず、世界的視野での放射線防護にまで高め、国内省庁、および国際機関との連携をしながらの提言も目指したい。
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Causes of Carryover |
セシウム吸収リスクの評価実験が成功し、想定よりも少ない実験で成果が出る見込みとなった。一方、研究計画時の想定を超えた知見が得られ、より実践的な生産工程管理の考え方が提唱できる見込みであり、地理情報システムの活用を踏まえたリスク評価マップの作製なども次年度の視野に入れたい。
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Research Products
(18 results)