2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16081204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 宏 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 教授 (80178574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 富雄 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 教授 (50126059)
真下 哲郎 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 准教授 (60181640)
浅井 祥仁 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (60282505)
上田 郁夫 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (70292836)
金谷 奈央子 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (80418780)
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Keywords | 陽子陽子衝突型加速器 / エネルギーフロンティア / ヒッグス粒子 / 超対称性粒子 / 分散解析 / コンピューティンググリッド / 国際研究者交流 / スイス |
Research Abstract |
本研究の研究期間は平成21年度までの予定であったが、LHC加速器の予期せぬ故障等により本年度に繰り越して研究が行われた。平成22年3月末にはLHC加速器は世界最高である衝突エネルギー7TeVでついに実験を開始した。今年度はその最初の物理結果が得られた年である。 これまで100fb-1の多くのデータが必要だと考えられていたヒッグス研究が、本計画研究の2つの大きな成果により、約10倍に感度が高められた。1つは、vector boson fusion過程(VBF)で生成されたヒッグスボソン(H)がττに崩壊する過程の研究を世界に先駆けて行い、高い発見能力を有することを示した。今年度取得された実験データを用いて本格的なヒッグス探索が行われた。まだデータが必要なルミノシティーの30分の1程度の為発見には至っていないが新しい制限が多く得られた。超対称性を導入すると、3つのヒッグスH/A/hがττに崩壊できる。そのうち、H/Aは、tanβが大きくなると崩壊分岐比大きくなり、今年度のデータでも発見が期待されていたが、残念ながら発見には至っていない。A質量400GeV付近まで新たに棄却された。ヒッグス粒子の質量が130GeVより重い場合H→WWが主要な発見モードであり高い感度が期待されている。2つのWが共にレプトンに崩壊した場合はクリーンな信号になる。2つのレプトンとmETからMTを構成している。またデータの統計が不足しているが、実験データは標準モデルWWバックグランドと無矛盾な分布であり、これから標準モデルヒッグスに制限が与えられた。 ATLASの物理解析を行うための分散解析網の構築が続けられてきた。LHCの4つの実験が共同して、Worldwide LHC Computing Grid(略称WLCG)と呼ばれる世界規模の分散解析網を配備し、このグリッド上で解析が行われている。国立情報学研究所が運用するSINET国際接続を利用し、定常的に200MB/s以上の転送量で欧州からデータが送られてきている。このように世界中の研究者がそれぞれの研究機関にいながら解析が行える環境が整っている。
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