2007 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論のコンパクト化に基づく標準模型へのアプローチ
Project/Area Number |
16081206
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江口 徹 Kyoto University, 基礎物理学研究所, 教授 (20151970)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 祐二 東京大学, 大学院・理学系・研究科, 助教 (70291333)
伊藤 克司 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (60221769)
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Keywords | 超弦理論 / 超対称性 / ゲージ理論 / D-ブレーン / 共形場理論 |
Research Abstract |
超弦理論において素粒子模型として有望な超対称フラックス真空は、モジュライ空間上において特異カラビ・ヤウ空間の近傍に多く存在することが知られており、また多くの未解決問題を含むという意味においても、特異カラビ・ヤウ空間上の超弦理論は重要性を持つ。江口と菅原は、昨年に引き続き、非コンパクト特異カラビ・ヤウ空間に対し、超弦理論における重要な物理量である楕円種数の代数的構造を調べ、深く関連するN=4超共形代数の指標やアッペル関数の性質を詳細に調べた。江口はまた、特異K3ファイバーを持つカラビ・ヤウ空間上のコンパクト化において、重力がdecoupleする極限に関し詳細に解析し、近年「弱重力予想」として知られる興味深いエネルギースケールが実際に現れることを示した。 伊藤は、D3ブレーン上の低エネルギー有効相互理論である超対称ヤンミルズ理論における様々な階数の一定R-R背景場中の効果を超弦理論の散乱振幅から計算し、その幾何学的な意味を考察した。特に超空間の定式化がよくわかっていないN=4超対称性を持つ場合への拡張を論じ、スカラー場の配位にファジイ球の真空構造があることなどを見出した。さらに非可換超空間とは質的に違う新しい変形された場の理論が得られることを示し、それが結合定数を超場に拡張することにより解釈されることを示した。最近AldayとMaldacenaによるAdS/CFT対応を用いたN=4超対称Yang-Mills理論のグルーオン散乱振幅の強結合領域における計算が注目を浴びているが、伊藤は彼らの4点関数の計算を拡張することにより、6点関数や8点関数の計算を行った。摂動論から得られるn点関数の予想とは異なる結果が得られ、この対応に関する新しい問題を提起した。 菅原はT-双対性やミラー双対性変換によるオービフォルド化を含むような非幾何学的背景上の弦理論を世界面上の共形場理論を用いて研究し、モジュラー不変性や境界状態によるD-ブレーンのスペクトルについて解析した。
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