2009 Fiscal Year Annual Research Report
アトラス実験での精密測定と標準理論を超えた物理の研究
Project/Area Number |
16081210
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
岩崎 博行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (40151724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 修 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (30178636)
新井 康夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (90167990)
寺田 進 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (70172096)
池上 陽一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (20222862)
東城 順治 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (70360592)
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Keywords | 素粒子実験 / 国際協力実験 / 標準理論 / ハドロンコライダー |
Research Abstract |
LHCはヘリウムリーク事故後平成21年11月から運転が再開され、重心系エネルギー0.9兆電子ボルト(TeV)での陽子・陽子衝突に成功した。その際、シリコン測定器他の内部飛跡測定器の数年に渡る稼働・較正を精密に行ったことにより、データ収集後ただちに荷電粒子の多重度分布の測定を可能とした。また、ミューオン・トリガーとデータ収集系でも衝突実験開始時に正しいタイミングでレベル1・トリガーを出力することが出来た。平成22年3月からは重心系エネルギー7兆電子ボルトでの衝突運転が本格的に稼働し始め、検出器性能のモニター及び調整を引き続き行っている。また、ルミノーシティの上昇に伴い、トリガー頻度などのパフォーマンスの評価と論理の最適化を随時行っている。 実験開始からは順調にデータ収集を行い、TeVエネルギー領域での直接的精密測定による標準模型の検証を進めている。1年間のデータで既に多くの検証をすることが出来た。重心系のエネルギー7TeVでの陽子陽子衝突におけるトップクォーク対生成断面積を初めて測定した。まだ統計誤差が大きいが、結果は量子色力学(QCD)からの予想と一致する。またこのエネルギーでのWとZの生成断面積を初めて測定した。イベントトポロジーとしてはレプトン(電子かミューオン)に崩壊するモードを調べた。同じく7TeVでのジェット断面積を初めて測定した。インクルーシブ・ジェット生成断面積とジェット対生成断面積の測定値はNLO QCDの予想値と測定の不定性の範囲内で一致し、新しいキネマテック領域でも理論が有効であることが確認された。LHCのキネマテック領域でもQCDの計算がジェット対のデータを十分に再現することから、ジェット対に崩壊する新粒子探索も行った。今のところ標準模型の予想からのずれは見つかっていないが、もし見つかれば新しい物理の扉を開くことに繋がる。
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