2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16089202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本村 凌二 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40147880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 康成 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10116056)
池上 俊一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70159606)
松本 宣郎 東北大学, 大学院文学研究科, 教授 (60011368)
樋脇 博敏 東京女子大学, 文理学部, 助教授 (70251379)
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Keywords | 古代ローマ / カンパニア / 社会史 / 心性 / 表象文化 / 言語文化 / 日常生活 / 宗教 |
Research Abstract |
18年度は、まず前半において、10回の研究会を開き、研究動向と当面する現地調査における作業活動の方針をめぐって検討した。本研究プロジェクトの狙いは、なによりもそこに住む人々の目に映った生活環境を探究しながら、古代人の心性を掘りおこすところにある。そのために、古代人の生活空間のなかで宗教儀礼の意味を観念や理性に関わる次元だけではなく感性や感情に関わる次元まで掘り下げて考察することが当画の課題となった。それには、古代人の目に映る風景は、物理的には現代人の目に映る風景と同じでも、時代を隔てた人々のなかで生まれる心象はかなりの差異があることを銘じておかなければならない。しかし、宗教の教義や儀式の詳細に立ち入るのではなく、あくまでも表象文化および言語文化のなかで人知を超える力がどのように感じられ意識されているかということを解明しなければならないのである。 このために9月にポンペイとその周辺部の現地調査をおこなった。そこでは専門知識を有する大学院生を研究協力者に要請し、調査の範囲を絞り込んでみた。公共の神殿はもちろんのこと、大規模住宅の礼拝所のみならず中小規模の住宅における祭礼儀式をしのばせる施設の映像記録を収集することにつとめた。それとともにそれらが生活空間のなかで利用される仕方をさまざまな視角から調査した。そのためには、現地に残る碑文や落書きのその場における映像記録も不可欠であり、それらのデジタルカメラ撮影およびデジタルビデオ収録とともに、さまざまな実測結果を詳細に記録した。 その後、収録・撮影した資料をデータベース化するとともに、8回にわたる研究会を開き、個々の資料について体系的に検討し整理した。これらの作業のなかで、宗教儀礼はおそらく古代人の目に映る風景の背後に厳然とひそんでおり、彼らの心象風景を感知し再現するためには、儀礼慣習の有様を言語資料の上で確認する必要が痛感された。そのために、『ラテン碑文集成』CILの第4巻の索引を全面的に加筆・修正する作業にとりかかっている。今後は、それらの某礎作業にもとづき古代人の心性を大きな歴史的文脈のなかで比較検討していきたい。 これまでの研究成果については、暫定的な結論とともに、中間報告書『カンパニア地方の生活空間と心象風景』にとりまとめている。
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Research Products
(22 results)