2005 Fiscal Year Annual Research Report
固体高分解能NMRおよびESR分光法による新しい文化財分析法の開発
Project/Area Number |
16200049
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
江口 太郎 大阪大学, 総合学術博物館, 教授 (50107083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 貴洋 大阪大学, 総合学術博物館, 助教授 (70294155)
福永 伸哉 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (50189958)
宮久保 圭祐 大阪大学, 大学院理学研究科, 助手 (70263340)
谷 篤史 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10335333)
肥塚 隆 大阪人間科学大学, 学長 (90027988)
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Keywords | 文化財科学 / 固体高分解能NMR / ESR / 埴輪 / 琥珀 / アンコールワット遺跡石材 |
Research Abstract |
昨年度以来、NMRイメージング装置を概算要求しているが、現時点では認められていない。したがって、今年度も主として固体高分解能NMRとESR法を用いた産地同定法開発のための基礎研究を推進した。 新しい装置としてNMRマウスを運営費交付金で導入した。これは表面コイルを用いて資料の含有水分の状態を非破壊的に観測する装置である。たとえば、紙の劣化防止は、書籍、巻物、掛け軸などを取り扱う文化財科学において非常に重要な課題である。紙の主成分であるセルロースは、互いに絡まり合ってナノ空間を形成する。この空間は、製紙過程で取り込まれた水分子で満たされている。紙の劣化は、非晶質性セルロース部を通してこの水が失われることで進行すると考えられている。数種類の標準的な紙を用いて予備的な測定を行い、本年3月末の第86回日本化学会春季年会で発表する予定である(江口・上田・宮久保)。 また、ナノ空間の基礎的性質を探るXe-129 NMRを用いた物理化学研究も並行して推進している。(江口・上田・宮久保・小林・尾身)これに関連して、昨年末の環太平洋化学会(Pacifichem 2005)において江口は「材料化学へのNMRの応用」のシンポジウムをオーガナイズし、上田が招待講演を行った。 資料収集も引き続いて行っている。まず、肥塚の仲介でアンコールワット遺跡の砂岩片(推定されている7カ所の石切り場に対応)をJSA岩石班班長の内田教授(早稲田大学理工学部)から譲り受け、^<29>Si MAS NMRとESRの測定を行っている。NMR測定は常磁性不純物のためにS/Nが悪く難航しているが、データが蓄積しつつある段階である。さらに、埴輪資料の収集を福永・寺前が行った。 谷は、昨年7月にドイツで開催されたルミネッセンス法と電子スピン共鳴(ESR)法を用いた年代測定の国際会議に出席し、"Radiation-induced free radicals in gas hydrates"と題して発表するとともに、最新情報の交換などを行った。
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Research Products
(5 results)