2006 Fiscal Year Annual Research Report
メイガ類における同胞種群および種内系統群の分化の要因
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16208005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田付 貞洋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (40163480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 幸男 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助教授 (60125987)
星崎 杉彦 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助手 (10270894)
本田 洋 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 教授 (90126160)
吉安 裕 京都府立大学, 大学院農学研究科, 教授 (90038315)
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Keywords | ツトガ科 / 種分化 / 性フェロモン / 生合成 / 音響交信 / 生殖隔離 |
Research Abstract |
■アワノメイガ属アワノメイガ種群の分化に関する研究 1.性フェロモンの生合成系 (1)種群に共通するΔ11位不飽和成分を持つアズキノメイガと,特異なΔ12位不飽和成分をもつアワノメイガの性フェロモン生合成経路を比較した.両種はともにΔ11とΔ14の2種の不飽和化酵素遺伝子を発現するが,翻訳以降のレベルで異なる抑制が働いて異なる不飽和位置の成分が作られることを示した.(2)性フェロモン生合成の別の鍵酵素であるフェロモン腺特異的脂肪酸還元酵素(FAR)の遺伝子クローニングを試み,FAR様配列をもつ13種の遺伝子断片のうち1種がフェロモン腺特異的に発現していることからこれがFAR遺伝子と推定し,全長の配列を確認した.現在,この遺伝子の機能を解析中である. 2.オスの超音波求愛歌 本属は交尾時に雄が種特異的な超音波を発する.アワノメイガで微細解剖学的観察と行動学的実験を組み合わせ,発音器官の同定と発音機構を解明した.発音は,はばたき時に前翅と胸部の特化した鱗粉が触れ合うことで生じるという世界初の例を示し,この超音波の生態的機能を行動学的実験結果から考察した. ■ニカメイガにおけるイネ系統とマコモ系統の分化に関する研究 (1)雄交尾器形態を多変量解析により比較し,これまで違いがないとされた外部形態的な差異を初めて検出した.(2)従来,両系統間には交尾時間帯に明瞭な遺伝的差異が見られ,これが両系統の生殖隔離に機能すると考えられてきたが,両系統が同所的に生息する茨城県つくば市では両者間に交尾時間帯に違いが見られず,両者間の隔離機構の発達には別の要因が存在することを示す重要な知見を得た. ■ワタノメイガと近縁種オオワタノメイガの雄性フェロモン 両種はアオイ科やアオギリ科を寄主とする同所性の近縁種であり,雌性フェロモンも同組成でわずかに比率に違いがあるだけである.これらの雄ヘアペンシルから抽出された雄フェロモン成分には種間差が見られ,この違いも隔離に重要な機能があることを示した.
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