2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16320029
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
藤井 淑禎 立教大学, 文学部, 教授 (30132252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 憲司 立教大学, 文学部, 教授 (00123761)
前田 一男 立教大学, 文学部, 教授 (30192743)
石崎 等 立教大学, 文学部, 教授 (80141167)
成田 康昭 立教大学, 社会学部, 教授 (80198390)
原 克 早稲田大学, 教育学部, 教授 (40156477)
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Keywords | 大衆文化 / サブカルチャー / 都市 / 震災復興 / モダニズム / ミステリー |
Research Abstract |
従来の乱歩研究が乱歩や乱歩文学の特殊性にばかり注目してきたのに対して、本研究では、昭和モダンの時期を中心として大衆の20世紀を生きた乱歩の足跡に注目して、そこから、大衆文化研究という広々とした地平へと踏み出すことが企図されているが、本年度もそうした方向で諸研究が進められた。 石川巧と成田康昭は小説の中の犯罪と現実の犯罪との相関性の検討に取り組み、捜査方法の変遷、警察の関わり方の変化、都市や大衆と犯罪との関わり方の考察を進めた。原克は科学雑誌の検討を通じて作中の科学・都市と現実のそれとの相関を考察し、藤井淑禎は昭和モダンの世相・文化に乱歩作品がいかに多くを負っているかを検証した。渡辺憲司は近世からのサブカルチャーの流れとの関わりを、石崎等は『宝石』特集号に顔を見せた秀しげ子と乱歩との関わりを、前田一男は戦前戦後の少年像の変化と戦後の少年をめぐる状況を、そして宮川健郎は山本有三に象徴される優等生的少年ものと乱歩作品との比較を、それぞれ考察した。 総括するに、現段階では、科学に着目した原の仕事が唯一世界的規模で乱歩問題を概観しているが、藤井や石川が協力者の支援のもと進めている、戦前期東アジアの大衆文化の中の乱歩、という観点も今後さらに模索を続けていく必要がある。他方、本研究のもう一つの重点項目である、寄贈ないしは寄託された乱歩旧蔵図書や資料・ノート・原稿などの整理は立教大学図書館を中心として作業が続いているが、今年度は、本研究としてはさほどの関連は持ち得なかった。さいわい、来年度は旧邸を拠点とした大衆文化研究センターの発足も見込まれており、それとの連携も今後の重要な課題となる。
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Research Products
(7 results)