2004 Fiscal Year Annual Research Report
高分子系のマクロな粘弾性特性に対する動的自己無撞着場理論の展開
Project/Area Number |
16340120
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川勝 年洋 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20214596)
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Keywords | 高分子 / 粘弾性 / 動的自己無撞着場理論 / レプテイション / 相分離 / 協同現象 / 流動 / 自己組織化 |
Research Abstract |
高分子のマクロな粘弾性を再現するためのメソスケールの理論体系を構築する目的で、自己無撞着場理論やGinzburg-Landau理論(乱雑位相近似)などによる鎖の配位エントロピーの計算とマクロな流体力学の結合を目指した準備研究を行った。本年度は、3年計画の最初の年度として、粘弾性特性を有する種々のメソスケール構造の計算手法や動力学のモデル化を行った。主たる成果は以下の通りである。 1.ブロック共重合体メルトのジャイロイド構造にずり変形を加えた場合に生じるシリンダ構造への構造相転移の動力学を、拡散ダイナミクスに立脚する動的自己無撞着場理論を用いてシミュレートした。実空間でのモデル化と系のサイズを可変とするシミュレーション手法の導入により、これまでは再現できなかったジャイロイド構造からシリンダ構造への一次相転移にともなう核生成と成長過程を観測することに成功した。 2.共同研究者のYuan教授と共に、マクロな流体力学方程式に自己無撞着場理論から計算される応力分布を取り入れたモデル化とシミュレーション手法の開発は開始した。現在、プログラムの開発段階である。Yuan教授は今年度末から三ヶ月間日本に滞在する予定であり、引き続きプログラム開発とテストを継続する。 3.ブロック共重合体の粘弾性特性は、そのミクロ相分離構造に強く影響される。従って、ミクロ相分離構造を意のままに制御する方法の開発は、本研究にとっても非常に重要である。そこで、タンパク質の折りたたみ問題に着想を得た方法を用いて、所望のミクロ相分離を生成するブロック共重合体のモノマー配列を取得する理論的な手法を開発した。 4.末端感応性高分子のゲル化にともなう粘弾性挙動の変化を、統計力学的にクラスタ分布を計算することによって再現するモデル化を行い、ゲル化温度の前後における周波数依存弾性率(G'およびG")の温度依存性を再現するモデルを構築した。 5.粘弾性流体のモデルを自律分散ロボットに適用し、環境変動に応じて形態を変える群ロボットのモデル化とシミュレーションを行い、群知能の発現の1つのモデルの構築に成功した。
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