Research Abstract |
乾燥地では土壌の塩類化,アルカリ化などの土壌劣化を予防するため,適切な水管理と土壌管理が必要で,灌漑農地の不撹乱土壌における塩分動態を把握すること,除塩のためのリーチングに伴う下方浸透量を正確に計測する技術を開発することが必要である。1,熱パルスセンサーを使って土壌中の移流速度を正確に測定する技術を構築し,砂丘砂を用いた浸透実験を行った結果,5.6cm/dayから27m/dayの広い範囲で正確にフラックスを推定できた。2.開発したフラックスメータを砂地圃場に埋設して,根群域からの下方浸透量と溶液の電気伝導度の経時変化を記録し,ラッキョ畑の水収支を試みた結果,92%から115%という高い採水効率を記録した。3,農場の畑で不撹乱土壌を採集し,カラム内の水分移動の試験を行った結果,耕運機による土の圧密による成層水分移動現象を観測し,土壌硬度,乾燥密度,三相分布と水分移動特性との関係を示した。4.砂丘圃場のラッキョ畑で,下方浸透水の量および質を測定し,硝酸態窒素の分析を行った結果,通常の肥培管理では問題ないが,連続降雨量が大きな降雨イベントの後で,高濃度の硝酸態窒素洗脱を観測した。5.安価なパンライシメータとウィックライシメータの土壌溶液採取装置を砂地圃場に埋設して採水の詳細分析を行った結果,砂丘畑土壌では前者による採水効率は低く,後者では,採水継続時間が長く,ライシメータ周辺の土壌水まで回収する傾向が示された。現在,水収支計測を強化し,圃場の下方浸透量の定量精度を高め,装置による採水効率の妥当性を再検討している。6.今年度は,砂地以外に,林地,畑地を対象にして,不撹乱土採取装置を試作し,内径15cmまでの不撹乱土カラムの採取を行った。採取した試料に対して,水分飽和・不飽和流れの溶質分散実験を行い,不撹乱土の構造と溶質分散についての考察を行った。
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