Research Abstract |
口腔機能としての味覚および温度感覚は,味覚検査液(スクロース,塩化ナトリウム,酒石酸,塩酸キニーネ)の温度を5,15,30,45,55℃に変化させ,全口腔法味覚検査にて検査するシステムを確立し検討したところ,高齢有歯顎者と若年有歯顎者では,酸味の検査液温度30と55℃で有意に前者が閾値が高かったのみで,加齢に伴う味覚感受性の変化は小さいことを認めた。さらに,口蓋を被覆する形態の義歯を装着したとしても,それが味覚感受性に及ぼす影響は小さいとの結果を得た。 舌運動機能は,被験食品(5g)を習慣性咀嚼運動の1回嚥下を被験運動とした際の,舌圧を全口蓋床に圧力センサPS-1KC(共和電業)を埋入して測定すると同時に,顎筋筋活動(咬筋浅部,顎二腹筋前腹,口輪筋,胸鎖乳突筋)を同時測定するシステムを確立し検討を行ったところ,高齢有歯顎者と若年有歯顎者で咀胃嚼進行に伴う舌圧と顎筋筋活動の様相の相違はほとんど認めないが,高齢有歯顎者で舌圧の低下を認めた。さらに,舌圧の分布様相から,上顎総義歯装着者においては犬歯相当部から第二大臼歯相当部の義歯床口蓋側形態が咀嚼の難易を決定するとの結果を得た。 顎筋筋活動と最大咬合力との関係においては,加齢に伴って最大咬合力に達するまでの時間が延長し,筋活動量がリニアに低下することが判明した。このことを反映して,高齢者で咬合力の低下と硬固物咀嚼の難度の上昇を招いていることが判明した。
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