2006 Fiscal Year Annual Research Report
インドシナ半島におけるマカク属の進化:アカゲザルとカニクイザルを主として
Project/Area Number |
16405017
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浜田 穣 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (40172978)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 芳 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (00177750)
大井 徹 森林総合研究所, 関西支所・生物多様性研究グループ, グループ長 (10201964)
泉山 茂之 信州大学, 農学部, 助教授 (60432176)
|
Keywords | インドシナ / Macaca / 系統地理学 / 遺伝子浸透 / 交雑 / 種形成 / 亜種 / 地域変異 |
Research Abstract |
調査対象5カ国で以下のような捕獲調査を行った。 1.ベトナム:中部地方、チャム島で野生のマカク個体群を観察し、体色が上半身が灰色、下半身が黄色っぽいアカゲザルと同様のパターンであるが、尾が座高の約60-80%であり、頭顔部の毛並みがカニクイザルに似る、という両種の交雑を推測させる形態特徴を示した。これらの個体の糞を収集したので、遺伝的特徴の解明が期待される。 2.ラオス:北部では、森林被覆率がかなり低下しているが、アッサム・アカゲ・ブタオ・ベニガオザルがテナガザルやラングールとともに広範に分布している。ペットアカゲザルの観察から、北部地域のアカゲザルは、同種の西グループに近い尾長を認めた。南部の調査から、カニクイザルはラオスの最南部にしか分布していないことが確かめられた。 3.タイ:北部・西部でマカクの分布調査を行い、南部では4地域個体群、東部で1個体群の捕獲調査を行った。タイではアンダマン海岸地方にしか分布しないaurea亜種も含まれており、分析によって亜種分化の過程が明らかにされるだろう。形態学的分析から、タイのカニクイザルにはクラ地峡の隔離効果によると思われる違いが見出され、その違いには北方グループへのアカゲザルの遺伝子浸透の影響が示唆される。チェンマイでの調査から、タイの西側では、交雑帯が北緯15-17度付近まで下がっていることが示唆された。 4.ミャンマー:これまで、現地での詳細な調査が行われていないミャンマーで、カイン州でカニクイザル(aurea亜種)を、ザカイン州でアカゲザルを捕獲調査し、データとサンプルを得た。今後の分析結果が期待される。また西部・中部で巡回調査を行った結果、ベンガル湾岸地方での調査ではアカゲザルの分布は確認されたが、カニクイザルについては認められなかった。この地域はカニクイザルの分布としては高緯度であり、マングローブ林などに限定されている可能性がある。 5.バングラデシュ:来年度の捕獲調査に向けて東北部と東部で、および西南部のシュンダルバン(広大なマングローブ林)で巡回調査を行った。いずれの調査地でもアカゲザルの生息が確かめられた。バングラデシュは国土面積が14万Km2と大きくはないが、ガンジス・ブラマプトラ・メグナ河という大河が流れ、雨季には広大な氾濫原となり、地域個体群は地域ごとに分断され、また分散の経路も異なっていることが推測される。
|
Research Products
(10 results)