2005 Fiscal Year Annual Research Report
日韓文化の比較-国宝臼杵石仏の真名野長者伝説と韓国国宝弥勒寺址石塔の末多王伝説-
Project/Area Number |
16520378
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
金 賛會 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋マネジメント学部, 教授 (00331124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 一信 立命館大学, 文学部, 教授 (20105365)
真下 厚 立命館大学, 文学部, 教授 (50209425)
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Keywords | 臼杵石仏 / 蓮城寺 / 末多王 / 真名 / 麻那 / 武王 / 薯童 / 東城王 |
Research Abstract |
本研究は、日本大分県の国宝臼杵石仏と蓮城寺(内山観音)の「真名野長者伝説」と、これと極めて類似している韓国国宝弥勒寺址石塔の「末多王伝説(薯童伝説)」の歴史的比較研究を行なうことに目的があった。今回の研究、現地調査を通して次のような成果が得られた。 (1)『三国遺事』の「武王物語」として記されている武王は実は武王ではなく、百済国の第二十四代の「東城王(末多王)」である可能性が高い。武王の幼名は、「薯童(まと)」である。『日本書紀』によれば、百済国の「東城王」を「末多王(またおう)」としているが、この「末多(また)」は「薯童(まと)」の音に通じる。「東城王」について、『三国史記』には「牟大」、『南史』『南斉書』『梁書』の「百済伝」には「牟都」の子、または孫として「牟大」が見える。『日本書紀』に「任那王、己能末多干岐(このまたかんき)が来朝した」という記録が見え、この任那の「己能末多干岐(このまたかんき)」は、百済の「末多王」と同系列の名前と見ることもできる。したがって、東城王は任那(伽耶)と同系統の百済王と見ることができる。 (2)『新撰姓氏録』に、「三間名公、彌麻奈国主牟留知王之後也」とあって、三間名公は牟氏族であり、崇神天皇は「御間城(那)」と関わる人物なので牟氏族である可能性がある。「三間名」の異称は、「御間名」「彌麻奈」「美麻奈」「彌麻那」となっており、「真名野長者物語」の「真名」、『日本書紀』の「麻那」は任那と同族である牟氏であることが考えられる。 (3)大分県の国宝臼杵石仏と蓮城寺(内山観音)の「真名野長者伝説」の主人公である「真名」は実在した可能性がきわめて高い。真名野長者の「真名」は当て字で、『日本書紀』に見える、「麻那王」と同一人物・氏族で百済の東城王の息子と考えられる。「真名」(麻那)という氏族は祖先が九州出身で、おそらく製鉄集団であると思われるが、この真名王族が政権争いによって大分県に移動し、それによって真名王族の神話とも言える「真名野長者物語」も一緒に運ばれたのではないかと思われる。 最後に本研究がきっかけとなり、大分県豊後大野市と韓国益山市が2005年8月に友好交流協定を結んだ。韓国からの研究者・祭りへの相互訪問、研究会組織、伝説に因んだ商品開発など、日韓交流のブームがまきおこっている。
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Research Products
(1 results)