2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520477
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
小池 伸彦 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部, 考古第一調査室長 (90205302)
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Keywords | 冶金 / 工房 / 古墳時代 / 古代 / 船底形土坑 / 鍛冶 / 鋳造 |
Research Abstract |
平成17年度は、平成16年度に得られた大型官営工房の生産様式・構造の分析結果に基づき、小型冶金工房の類型化を進め、7世紀以降の冶金工房の全体像や変遷過程について大きな見通しを得た上で、古墳時代における冶金工房の生産様式解明・構造分析も進めるという目的のため、以下の研究を実施した。 7世紀以降の小型冶金工房の類型化に関しては、平城宮および平城京内の冶金工房の分析を進め、古墳時代以来の伝統的形態を継承した工房と、奈良時代後半ないし末以降に導入された新技術で操業したとも考えられる工房とに分けられることが明らかとなった。これに昨年度明らかにした7世紀後半以降出現する大規模集約型工房とをあわせて、奈良時代後半ないし末以降の冶金工房が構造上大きく3類型に分けられることが判明した。古墳時代の工房に関しては、A)畿内政権周辺部の工房、B)畿内とその辺縁部の工房、C)地方の工房の3分野について資料収集・データ入力を進めるとともに、主として畿内政権周辺部の工房、特に大阪府森遺跡出土冶金関連遺物の分析と奈良県南郷(ハカナベ・角田)遺跡出土の冶金関連遺構について分析を実施し、生産様式の解明と構造分析に努めた。その結果、7世紀後半以降出現する大規模集約型工房との間に生産量の上で格段の開きがあることが分かり、また古墳時代の冶金工房を構成する要素が型式的変遷を経ながらも7世紀後半以降の工房にも継承されることが明らかになった。古墳時代の冶金工房を構成する要素とは具体的には船底形土坑であり、少なくとも藤原京の段階までは知られるが、奈良時代以降には今のところ明確には認められないことが判明した。
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