2004 Fiscal Year Annual Research Report
予防外交の視点からみた平和構築の比較研究-民主的平和の限界-
Project/Area Number |
16530108
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉川 元 神戸大学, 法学研究科, 教授 (50153143)
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Keywords | 予防外交 / 平和構築 / エスニック紛争 / イデオロギー紛争 / 東ティモール / ボスニア |
Research Abstract |
本年度は、欧州の予防外交と紛争後平和構築の現状を、欧州の場合、マケドニア、ボスニアおよびコソヴォで平和構築の現状と課題を分析することに努めた。ボスニアの例に見られるように、国境横断的多民族国家での紛争後平和構築においては、同国内の主要3民族に権力を平等に分かち合う権力分掌の制度が導入されているが、国民統合への道のりは遠いことが判明した。一見平穏ではあるが、民族和解も国民統合が進まない、その要因が明らかになった。また紛争予防の成功例にはいるマケドニアの予防外交については、早期に、しかも国際協調で進められた予防外交の成果であることが明らかになった。本年度は同時に、アフガニスタン、イラク、それに東ティモールの紛争原因と平和構築の現状について、資料および文献の収集を行った。国境横断的多民族国家のアフガニスタンおよびイラクの平和構築は、ボスニアと同様の原因で、同様の困難に突き当たっているとの確証を得た。東ティモールには現地訪問調査を行った。同国の1999年の紛争は、エスニック紛争ではなく、イデオロギー紛争であるだけに、平和構築はカンボジアの場合と同様に、比較的順調に進んでいることを見聞した。イデオロギー紛争後の平和構築とエスニック紛争後の平和構築が、それぞれ直面する課題に質的な相違があること、そしてイデオロギー紛争後に比べ、エスニック紛争後の平和構築がはるかに困難であるとの知見を得たが、こうした知見は、引き続き、イラク、アフガニスタンの平和構築の現状分析を進めることで、確かなものとなろう。
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Research Products
(3 results)