2005 Fiscal Year Annual Research Report
予防外交の視点からみた平和構築の比較研究-民主的平和の限界-
Project/Area Number |
16530108
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉川 元 神戸大学, 法学研究科, 教授 (50153143)
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Keywords | 平和構築 / 東ティモール / ボスニア / コソヴォ |
Research Abstract |
平和構築の比較研究の視座を、イデオロギー紛争後の平和構築と領域をめぐるエスニック紛争後の平和構築の、それぞれの課題について比較研究するとの目標で,平成17年度の研究計画を立てた。アフリカ各地およびボスニア、コソヴォにおける平和構築に関する資料収集および二次文献の分析を中心に比較を行ったが、アフリカでの平和構築を含む領域をめぐる紛争の多くは、いずれも平和構築に失敗しており、安定した民主制度の構築に向かっていないとの知見を得た。そこには、欧米モデルに基づく、自由で民主的な制度の導入を急ぐあまり、一見、平穏を装っている事例でも、実際には、国際社会の軍事的プレゼンス抜きには、治安は保てないというのが現状である。特に、社会がエスニック単位に分裂しているボスニアやコソヴォの平和構築の現状は、一般に語られているほど、安定してはおらず、そのことは軍事プレゼンスの撤退を待たねば、論証できないほどのことではない。 本年度は、イデオロギー紛争後の平和構築の事例として、東ティモールの事例を重点的に検証した。東ティモールの平和構築は、独立を支持するか否かの政策をめぐる紛争の後の、平和構築であり、順調に進められていると結論付けられる。その背後には、日本の「人間の安全保障」政策と題する開発中心の平和構築アプローチが効を奏していると判断できる。しかし、この点は、本年度には間に合わなかったが、近いうちに刊行される論文で公表することになっている。イラクとアフガニスタンの平和構築は、本年度は、資料、文献収集の段階にとどまり、分析にまではいたっていない。
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Research Products
(2 results)