2004 Fiscal Year Annual Research Report
オニバスなど絶滅危惧植物の発芽・栽培実験とこれらの体験学習を通じての環境教育
Project/Area Number |
16530603
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
宮脇 博巳 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (70190824)
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Keywords | オニバス / 佐賀の自然 / 環境学習 / 発芽実験 |
Research Abstract |
オニバス(スイレン科、佐賀県絶滅危惧II類種)は、直径2mに近い巨大な葉を水面に浮かべるアジア特産の水草である。ハスに似ていて植物体に鋭い刺があるため、オニバス(鬼蓮)と名付けられる。直径1cmほどの種子は5月ごろ発芽し、その年の秋には一生を終える一年生の浮葉植物。日本では特に成長が盛んな6月から8月の2〜3ヶ月間で、1mを越す大きな葉になる。葉の成長が、24時間で25cm広がったという記録もある。このような壮大な成長力の動因はなんであろうか? 芽生えから、まず針状の第1葉が伸びてくる。第2、第3葉と矢じり型の沈水葉(写真2)が出て、ふつう第4葉から浮葉になる。初期の浮葉は細長く、刺もないが、あとから展開する浮葉ほど円形に近づき、10数枚目の葉から鋭い刺のある葉になる。この時期に一斉に消えて密度低下をもたらしている原因は何であろうか? オニバスの花には、水中で開花せずに自家受粉して種子をつくる閉鎖花と水面上に出て開花する紅紫色の開放花がある。閉鎖花は6月下旬〜9月上旬ごろに見られ、結実がよい。一方、開放花は8〜9月ごろに見られ、結実が悪い。そのため、オニバスの種子生産の大半は閉鎖花による。閉鎖花の受粉は「つぼみ」が水面に達する以前におこっているが、開放花でも、開花したときには殆どが受粉を完了しており、昆虫が受粉の媒介をする可能性は殆どないといわれている。このことはオニバスでは他家受粉の可能性が失われていることを意味する。それにしても両者の花の形態に根本的な差はないのに開放花の結実が悪いのはどうしてだろうか? 秋に成熟した種子が翌春、発芽することもあるが、翌々春あるいは数年後に発芽するなどオニバスの種子の休眠期間は一定しているわけではない。1994年は猛暑、異常乾燥の年であったが、佐賀平野の数ヶ所のクリークでオニバスが大発生した。その後、ほとんどの場所で消失したが、幾つかの場所では2003,2004年度と発芽開花した。オニバスの種子は、いったい、どんな刺激が引き金となって発芽を開始するのか?疑問の存在ばかり解明した。以上のような概説は宮脇博巳(2005)で発表した。
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Research Products
(1 results)