2004 Fiscal Year Annual Research Report
北陸における近世寺院建築の特質と成立に関する基礎的研究…建仁寺流と寺院の存在形態
Project/Area Number |
16560569
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
櫻井 敏雄 近畿大学, 理工学部・建築学科, 教授 (60088424)
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Keywords | 建仁寺流 / 坂上越後守嘉任 / 甲良豊後守宗廣 / 妙成寺 / 法華教寺 / 那谷寺 / 瑞龍寺 / 近世禅宗様 |
Research Abstract |
本研究には二つの側面がある。一つは北陸の大寺を建立した建仁寺流の大工とその作品の研究である。残る一つは北陸にみられる切妻造の寺院本堂とその成立と特色である 特に前者の問題は同じ建仁寺流大工を称し最終的に前田家と結び大工頭となる坂上(後に山上を称する)の一統と、徳川家すなわち江戸幕府で活躍し大棟梁となる甲良の作品の分析という問題と深く関連する。その作品を検討する方法は、細部意匠の問題は別として、建築の種別が同種のものであることが条件となるが、本研究では本堂と塔の遺構を中心として基本寸法計画について検討しつゝあり、所期の成果が特に禅宗様仏堂と層塔について得られはじめている。 特に六支掛としない手法や、肘木の独持な形態、石材を屋根に使用することは特記される。層塔、特に五重塔については、妙成寺のもののみならず、甲良が関東で活躍したことから、また中山法華経寺の塔が坂上の居住地北之庄(福井市)の大工小国氏と和歌山根来坂本大工によって建立されているところから、こうした遺構についても検討を加える必要がある。 幕府には従来より仕えていた鈴木氏がおり、そこに法隆寺大工に出自をもつ大工が中井氏のもとに集結され、関西を中心として活躍したのに対し、和歌山の『匠明』を記した平内氏も関東に下って大棟梁の地位を与えられる。 平内も根来の大工も和様系の大工であり、そこに禅宗様系の甲良などが加わり、幕府の大工組織は確固たるものとなったろう。しかし、こうしたことの一方で、建築家たちの確執や競争も激しかったと思われる。遺構を分析する中で、和様と禅宗様がどのように調整されたかを検討できる可能性ができつつある。 近世の建築が折衷様であることと、幕府の大工組織の在り方とは関係があるのかどうかも興味深い点である。こうした点についても、実地調査をふまえて17年度の検討課題としておきたい。
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Research Products
(2 results)