2005 Fiscal Year Annual Research Report
犬の実験的副腎皮質機能抑制モデルにおける下垂体前葉構造ならびに機能の変化
Project/Area Number |
16580269
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Research Institution | Nippon Veterinary & Animal Science University |
Principal Investigator |
原 康 日本獣医畜産大学, 獣医学部, 助教授 (00228628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多川 正弘 日本獣医畜産大学, 獣医学部, 教授 (90097072)
根津 欣典 日本獣医畜産大学, 獣医学部, 助手 (20350176)
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Keywords | 下垂体 / オペプリム / 副腎皮質機能抑制モデル / Cushing病(クッシング病) / 副腎皮質機能亢進症 / 下垂体腫瘍 / 犬 / MRI |
Research Abstract |
研究の背景:犬のCushing病患者に対してはop^-DDD(mitotane製剤)を使用した治療が一般的に普及している。視床下部-下垂体前葉-副腎皮質系の生理学を考慮した場合、Cushing病患者に対して副腎皮質機能を抑制することは下垂体腺腫の機能を亢進させる危険性が危惧される。 目的:健常ビーグル犬を使用して副腎皮質機能抑制モデルを作製し、これが下垂体corticotrophに及ぼす影響を形態的そして機能的に検討すること。 材料と方法:健常ビーグル犬において30日間op^-DDD(mitotane製剤)を使用して副腎皮質を化学的に破壊することにより、犬の副腎皮質機能低下症モデルを作成した。対照として健常ビーグル犬を使用した。この作成過程における下垂体の形態的変化を頭部MRI撮影による下垂体/脳比(PBR)を算出することにより測定した。また機能的変化についてはCRH刺激試験で評価した。また安楽死後に採取した下垂体組織上のcorticotrophについて免疫組織化学染色を施し、その細胞面積、および全下垂体前葉細胞に対する割合を測定した。同様に視床下部・室傍核におけるCRH産生細胞数を測定した。下垂体のホルモン産生細胞の分化に関わる下垂体に特異的な転写因子(Pit-1およびT-pit)についても、免疫組織化学染色を施し、これら転写因子を発現している細胞の割合を測定した。さらに、下垂体から抽出したmRNAを材料として、POMC, CRHR, GR, MRの発現強度をReal Time RT-PCR法により検討した。 成績:op^-DDDを投与した副腎皮質機能低下症モデル動物では、対照犬と比較して有意なPBRの増大とCRH刺激試験時の有意に高い血漿ACTH濃度が確認された。また、このモデル動物から採取された下垂体組織においては、対照犬と比較してcorticotrophの有意な肥大が認められ、さらにモデル動物の下垂体ではPOMC-mRNA転写活性は対照犬と比較して有意に亢進していた。同様にモデル動物の視床下部・室傍核においては、対照犬と比較してCRH産生細胞数の有意な増加が認められた。 考察:今回作成した副腎皮質機能低下症モデル動物では、Cortisolの産生低下、すなわちNegative feedbackの減弱に起因すると考えられる、視床下部・室傍核におけるCRH産生細胞数の増加、下垂体corticotrophの機能亢進を示唆する多くの所見が確認された。今回の成績は、犬のCushing病患者に対してop^-DDD(mitotane製剤)を使用することは、本疾患の原因ともなるACTH産生性下垂体腺腫の機能亢進を促す危険性があることを示唆しているかもしれない。
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Research Products
(1 results)