Research Abstract |
妊娠ラットを用いて,LPS羊水腔内投与を行い,新生ラットに慢性肺疾患実験モデルを作成した.ラットを4群に分けた(i羊水腔内LPS(1μg)投与,胎児腹腔内G-CSF(0.25mg)投与,ii羊水腔内LPS投与,iii胎児腹腔内G-CSF投与,ivコントロール(生食)投与).Day21に薬物を投与した.Day22(薬物投与後24時間)に帝王切開にて新生ラットを娩出させ,里親ラットによりroom airで飼育した.各日齢(day1,3,7,14,21,45,60)における肺構造変化を,Morphometryを用いて解析した.LPSを用いた群では,肺胞表面積減少,肺胞数減少,肺胞半径拡大が認められた.これらは,Day7より著明となり,Day60も持続し,結果としてfewer and larger alveoliを呈した.G-CSF投与は結果に影響を与えなかった.光顕像ではLPSを用いた群で肺胞2次中隔の減少が認められたが,肺胞破壊像は認められず,弾性膠原繊維量や分布にも4群間に差を認めなかった.これらより,出生前のLPS負荷のみで新生ラット肺に構造変化を引惹起し,成獣であるDay60の肺にも変化を残すことが確認された.LPSを用いた群では,肺胞破壊の所見は認められず,肺胞の2次中隔が減少している事から,fewer and larger alveoliは,alveoralizationの阻害によるものと推察された.肺胞の形成阻害は,肺胞の成熟の加速と成長の阻害により成立すると考えられたため,成長ホルモン投与による治療効果が期待される.そのため,本疾患モデルに対する成長ホルモン投与による治療効果判定を計画した.予備実験において,本疾患モデルに対する成長ホルモン投与が生存率の改善をもたらす可能性が示唆されたが,成長ホルモンの至適投与量設定には至らなかった. 本疾患モデルにおいて、羊水腔内エンドトキシン投与が肺胞形成を阻害する機序の解明が今後の課題である.
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