2006 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学理論に基づいた硬組織代替用低弾性率・高耐食性チタン合金の開発
Project/Area Number |
16591960
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
白石 孝信 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助教授 (10150468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久恒 邦博 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (20037526)
宍戸 統悦 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (50125580)
藤田 剛史 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (90432971)
詫間 康子 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教務職員 (60160074)
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Keywords | チタン合金 / 弾性率 / ヤング率 / ポアソン比 / 量子化学 |
Research Abstract |
新しい低弾性率・高耐食性チタン合金を開発するため、チタンとの間で全率固溶体を形成するとともに、合金化によって溶融温度が低下するTi-Zr系に着目した。すなわち、Zrを20,40,60,70,80 at.%含有するTi-Zr系2元合金を作製し、各合金のインゴットから10 x 10 x 2 mm^3の板状試験片を切り出して、密度、ビッカース硬さ、ヤング率、およびポアソン比を求め、これらの各物性値の組成依存性を検討した。試料のビッカース硬さは、ビッカース微小硬さ試験機を用いて、荷重300gf、負荷時間15秒間の条件で10箇所測定し、平均値と標準偏差を求めた。ヤング率とポアソン比は、超音波パルス法により、縦波と横波の伝播速度の実測値から求めた。 Ti-Zr系合金の密度は、純Tiの4.47g/cm^3から純Zrの6.49 g/cm^3まで単調に増加したが、密度-組成曲線は両端の純Tiと純Zrを結ぶ直線よりわずかに上方に偏倚しており、Ti原子とZr原子が全率固溶体を形成する際に何らかの相互作用を示すことが示唆された。一方、純TiにZrを20 at.%合金化すると、ビッカース硬さは純Tiの157.4±6.2から341.4±13.9まで急激に増加した。Zr添加量をさらに増加させるとビッカース硬さはわずかながら増加し、Ti-60at.%Zr組成で最大値369.1±6.1を示した。純ZrにTiを20 at.%合金化した場合のビッカース硬さの増加量は78程度に留まり、Ti側での増加量184に比べるとかなり小さかった。 超音波パルス法によって測定したヤング率の組成依存性は、表題の量子化学理論から予測されたとおりの変化を示した。すなわち、純Tiのヤング率は122.2±1.2 GPaであったがZr添加によって低下し、Ti-60at.%Zr組成で最小値89.5±1.0 GPaを示した。Zr濃度をさらに増加させるとヤング率は増加に転じ、純Zrでは99.1±0.2 GPaであった。他方、ポアソン比の組成依存性はヤング率のそれとは正反対の傾向を示した。すなわち、純Tiでは0.294であったが、Zr添加によって増加し、Ti-60at.%Zr組成で最大値0.343を示した。Zr濃度をさらに増加させると純Zrの0.323まで徐々に減少した。 本研究では、量子化学理論に基づいて純Tiより低い弾性率を示すと予想される合金としてTi-Zr系合金を設計し、実際に作製した5種類の2元系合金についてヤング率を測定したところ、予想通りの結果が得られた。現行の生体内インプラント用チタン合金の弾性率はほぼ80〜110GPaの範囲にあることを考慮すると、本研究で作製したTi-Zr合金は新しい生体硬組織代替用合金として有力である。今後、量子化学理論に立脚して、さらに弾性率の低い合金組成の探索を続ける予定である。
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Research Products
(2 results)