2004 Fiscal Year Annual Research Report
近現代日本のオーケストラ活動のレパートリー形成に関する実証研究
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16720022
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
井上 登喜子 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助手 (90361815)
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Keywords | 西洋音楽の受容 / 洋楽受容 / 近代日本 / レパートリー / 学生交響楽団 / アマチュア・オーケストラ / 明治・大正期 / 音楽の正典化 |
Research Abstract |
本研究は、近現代日本の交響楽団を対象とし、資料研究に基く演奏活動のデータ収集と、デーダの統計分析を通して、西洋音楽のレパートリー形成に関する包括的な実証研究を行うものである。 本年度は、明治35(1902)年から大正15(1926)年までに民間で設立された交響楽団を対象とし、データ・サンプルの分析を通して、初期のレパートリー形成の傾向について考察した。 (1)職業交響楽団設立(大正15年「新交響楽団」)以前に、全国の高等教育機関に設立された学生交響楽団に関する資料調査とデータ収集を行い、データベースの構築とその解析を行った。考察対象は、東京帝国大学学友会音楽部オーケストラ、京都帝国大学学友会音楽部オーケストラ、東北帝国大学学友会音楽部オーケストラ、北海道帝国大学の札幌シンフォニー・オーケストラならびに文武会音楽部オーケストラ、九州帝国大学フィルハーモニー・オーケストラ、慶應義塾大学ワグネルソサイエティ、早稲田大学交響楽団、学習院大学輔仁会音楽部オーケストラの9団体とし、第二次世界大戦終了年(1945)までに演奏された曲目をサンプルとした(サンプル数3,829)。 (2)本サンプルのレパートリー構成を調べるため、全演奏曲目を(1)曲種と編成、(2)時代様式に基いて分類した。次に、レパートリー構成の変動を調べるため、(3)管弦楽演奏の比率と、(4)時代様式別分類で最も高い構成比を示した古典派作品の演奏比率に注目し、時代的推移と団体別差異を分析した。さらに、古典派作品演奏に関する線形最小二乗法による重回帰分析を行った結果、本サンプルだけでなく母集団においても、時代を追うごとに古典派の受容は高まり、また、時代の影響を統御した後でも、団体ごとに差があるということが明らかになった。 本分析により、明治後期から昭和戦前期のアマチュア交響楽団における西洋音楽受容は、当時の西洋社会で既に「正典化」された作品を中心に行われたこと、また、そのレパートリー形成は「正典化」の過程を促進しながら普及したことが明らかになった。
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Research Products
(1 results)