2005 Fiscal Year Annual Research Report
デーモクラティアー関連諸用語の文献学的分析による古代ギリシア初期民主政思想研究
Project/Area Number |
16730067
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
名和 賢美 一橋大学, 大学院・商学研究科, 助手 (40361860)
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Keywords | デモクラシー / 民主主義 / 民主政 / 古代ギリシア / 政治思想 / 公共空間 / 公開 / メソン |
Research Abstract |
本研究は、古代ギリシア民主政揺籃期に当時のギリシア人が「デーモクラティアー」と後に表現されるようになった事態をいかに理解していたか、という課題を文献学的に考察することを目的とするものである。平成17年度は3ヵ年計画の2年目として、内外の諸研究機関から文献を収集するとともに、古代ギリシア初期民主政思想研究に関連する用語であるコイノン(共有、公共)、デーモス(民衆)、クラトス(権力)について、平成16年度同様の文献学的分析を行った。 コイノンを例に挙げると、まずは、ギリシア語文献テキストデータベースを用いて、紀元前8世紀から前5世紀後半までの断片を含む現存文献からκοινを含む語全てを検索し、続いて、検索でヒットしたものの中から、コイノンの全活用形を拾い集めた。こうして網羅的に用例を収集した上で、各用例をそれぞれの文脈において検討し、その意味と性格を考察したのである。その結果、対象とする期間の文献から「コイノンに置く」という表現が見出され、その用法が本研究のキーフレーズである「メソン(真ん中)に置く」という表現と密接に関連することが確認できた。しかも、「メソンに置く」の用例がすでにホメーロスから多く見られるのに対して、「コイノンに置く」の用例は初期の文献には存在しないということも確かめられた。 コイノンに引き続き、デーモクラティアー(民主政)の語源であるデーモスとクラトスについても、コイノンと同様の作業を行った。デーモスの場合にはδημを、クラトスの場合にはκρατをもとに、これら二語の用例の収集・整理・分析を進めたのである。以上三用語の分析した成果については、研究発表および論文執筆の準備を進めている。
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