2017 Fiscal Year Annual Research Report
Is Mg ion a novel second messenger for regulating energy metabolism?
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16H01751
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡 浩太郎 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (10276412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
チッテリオ ダニエル 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00458952)
舟橋 啓 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70324548)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生体生命情報学 / シグナル伝達 / 神経化学 / 細胞・組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内のエネルギー代謝を制御する新規なセカンドメッセンジャー候補としてMgイオンに注目した研究を進めて来ている。本年度は特にエネルギー代謝の変動を把握する系の確立を目的とし、神経細胞ミトコンドリアの挙動とその集積・移動の解析を、ミトコンドリア膜電位とミトコンドリア内ATP濃度の蛍光イメージングを併用して調べた。従来ミトコンドリア活性を評価するためにミトコンドリア膜電位のイメージングが行われてきたが、我々の研究から、ミトコンドリア膜電位とミトコンドリア内ATP濃度は必ずしも強い正の相関を持つわけでないことが判明した。またこれらの2つのパラメータをミトコンドリアの融合と分裂時にも追跡することに初めて成功した。この成果は古くなったミトコンドリア機能がどのようにリフレッシュされるのかを考える上でも大いに貢献するものとである。 また細胞内でのMgイオンの役割の生理的な意味について、本年度は特に細胞分裂の際に一過的に細胞内でのMgイオン濃度が上昇するという知見を得ることに成功した。細胞が分裂する際、ヒトでは全長2メートルにもおよぶゲノムDNAからコンパクトに凝縮した染色体が作られ、2つの細胞に正確に分配される。半世紀以上前、細胞に大量に存在するMgイオンがゲノムDNA凝縮の鍵となりうることが提唱されたことがあったが、当時は細胞内Mgイオン濃度を測定する手段が無かったため証明されぬまま忘れられてた。本年度は細胞分裂の際にMgイオン濃度が一過的に上昇することを示すとともに、Mgイオンが負の電気を帯びているDNA同士の反発を弱め、染色体の凝縮を促進していることを明らかにできた。本研究によって、実際にMgイオンが細胞のなかで染色体の凝縮にかかわっていることが初めて証明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までにミトコンドリア動態を詳細に解析する手法の開発とミトコンドリア膜電位、ATP、ミトコンドリア移動などのパラメータを同時に取得して、相関解析を行う手法の確立に成功している。また細胞内Mgイオンの生理的な役割を、染色体のパッキングと絡めて明らかにすることができた。これらの成果は国内外で学会発表を行った他、すでに著名な英文ジャーナルに論文として公表することができた。当初予定していたように主要な解析手法を解析手法を整えることに成功したので、これらを利用してMgイオンのセカンドメッセンジャーとしての役割を明確にする研究を本年度は着実に進めてゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は細胞内セカンドメッセンジャーとしてMgイオンを捉えることができるかについて重点的に調べる。具体的には下記のような研究項目について、主に神経細胞に着目して明らかにする。 (1) 神経伝達物質GABA刺激に伴う細胞内Mgイオン動員機構の解明 我々の予備的な検討から、培養初期のラット神経細胞では抑制性神経伝達物質のGABAが細胞内Mg動員を行うこと、またこの動員過程は培養期間に応じて変化することが明らかになってきている。そこでこのMg動員とミトコンドリアとの関係を種々のイメージング技術を利用して明らかにする。 (2) Mgイオン濃度下流の様々リン酸化酵素活性変化の解析 もしMgイオンがセカンドメッセンジャーとして働くのであれば、Mgイオン濃度増大のあとで様々なリン酸化酵素活性等の変化が起きるものと期待される。そこでERK、CREB、mTORなどの活性をそれぞれの酵素活性を選択的に計測することが可能なFRET型センサーを用いて調べる。特に細胞内Mgイオン濃度と酵素活性との関係を同時に明らかにすることにより、Mgイオン濃度と酵素活性との関係を定量的に明らかにし、その制御様式の違いを示す。 (3) 神経回路の成熟過程に及ぼすMgイオンの役割の解明 神経回路が成熟する過程にはMgイオンが重要な役割を果たしているものと考え、GABA刺激に伴う細胞内Mgイオン濃度の増大と神経回路機能との関係を明らかにする。神経回路機能は、神経線維の配向状態や機能的なシナプス結合の数をイメージングにより調べることを考えている。また機能的な神経活動を明らかにすることを目的として、多数の神経細胞からなる回路に関して大規模なCaイメージング実験を行い、機能的な神経接続関係のMgイオンによる影響を示す。
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Research Products
(13 results)