2018 Fiscal Year Annual Research Report
Information System for Realizing Resilient Mind from Drifting Belief
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16H01836
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 幸生 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20273609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪倉 正治 星槎大学, 共生科学部, 客員研究員 (20527741)
久代 紀之 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (50630886)
平野 真理 東京家政大学, 人文学部, 講師 (50707411)
早矢仕 晃章 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (80806969)
瀧田 盛仁 星槎大学, 教育学研究科, 客員研究員 (20760292)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 信念の漂流 / 情報の生成・提供システム / 変数クエスト / 拡張ゴールグラフ / 問題解決 |
Outline of Annual Research Achievements |
不安因子と意思決定の阻害要因としての信念の漂流(Belief Drift: BF)指標の相関が、問題解決に関わる部分を除いて弱いことが明らかとなったこと、およびBF指標群のマップから問題解決シナリオが得られるという実験的IMDJの結果を跳躍台として、不安等の既知の心的状態は行動によって抑制すべきもの二次的な対象に位置づけなおした。すなわち、個人あるいは集団の悩みの解消を、不安の抑制ではなく問題解決という視点にフォーカスして信念の漂流を抑制する情報の獲得手法の開発を進める方針を固めた。 この方針に沿って、要求獲得および問題-解決-評価という構造の表出化を行う拡張ゴールグラフ(EGG)を適用を各方面に適用する実験を進めた。その一方で新たに可視化インタフェースと統合する形で開発を進めた変数クエスト(Variable Quest:VQ)が飛躍的に発達し、2018年度はVQシステムを多方面に提供し公開した。VQを用い、重視するBF指標に個人差がある様子を可視化する成果も得られている。 EGGとVQに共通する問題解決構造を、問題P、問題解決(意思決定)主体H、データ中の事象群Eの上に述語論理で形式化すると、solve(H, P) <- control(H, E), cause(E, P)のように、問題発生の背景にある因果関係causeと知識(制御可能性control)の関連性を司るEを把握することによって問題解決の糸口が得られる。現状のEGGでは、controlの前提となる問題解決手法の評価がHにとって必ずしも容易ではない。一方、VQではcontrolとcauseは医師など専門家の暗黙知に属すると考え、専門家が対話的にHにEの属性(変数)セットを気づかせることが問題解決を導くという道筋に達した。かくして、研究目的である情報生成・提供システムの設計と運用体制が確定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
不安という心的側面について直接扱う方針を改め、不安等の心理的状態は行動によって抑制すべき二次的な位置づけにおき、問題解決行動に結びつく心的状態を重視する行動のレジリエンスを指向する方向を強めることができた。これは、心理学における心的レジリエンスとは一線を画し、被災者の生活における復興(安全な元の住居に戻るなど)が十分迅速に進まないという現在の被災地の現状を緩和する実践的な方向性であるともいえる。 このように大方針の修正を行った結果、本研究の本質を、①問題の表出化 ②問題解決(ゴール)の論理的導出 ③導出過程において用いる問題解決手法と知識およびデータの気づきとその評価という知能情報学モデルに帰着させることができた。例えば、VQを用いてBF指標が可視化できることから、潜在的なBFを表出化して解決する手法の見通しを立てることができたことは順調な進捗と言える。EGGについては問題解決手法の重要度などの平易な評価インタフェースなどに課題が残るが、VQを中心システムとしながら、これを使う対象領域の専門家(例:医療者)等が、「悩み」を有する意思決定主体(例:患者)に対して自らの専門知識を表出化しながらアドバイスする際に必要な変数セットに注意を向けるという、情報生成・提供システムの設計と運用指針を得ることができた。この点は、当初想定しなかった飛躍的進歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、意思決定主体における悩み即ち問題の解決に資するデータ属性情報提供システム(Visual VQ)を中心とし、改良後のEGGを情報提供者が必要に応じて用いるという、BF抑制プロセスを確立し、実験的に検証してゆく方針に集中してゆく。 すなわち、個人あるいは集団の「悩み」を彼らのおかれた状況における「問題」として定式化し、問題とその解決策のなす導出構造において本質的役割を果たす知識をハイライトしながら必要なデータと情報を提供することにフォーカスした情報の生成・提供手法を完成させる。これまでにデータ設計という汎用性をめざす文脈で早矢仕・大澤が開発し公開してきたVariable Questの可視化インタフェースをBF抑制支援を指向して拡張し、これを医療等の信念漂流領域に適用し実験を重ね、メンバーの評価コメントを収集としてゆく。
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