2016 Fiscal Year Annual Research Report
JSPS Research Project on Islam and Gender
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16H01899
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長澤 榮治 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (00272493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 薫 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター中東研究グループ, 主任研究員 (00466062)
松永 典子 帝京大学, 理工学部, 講師 (00579807)
後藤 絵美 東京大学, 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク, 特任准教授 (10633050)
黒木 英充 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20195580)
岩崎 えり奈 上智大学, 外国語学部, 教授 (20436744)
服部 美奈 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (30298442)
岡 真理 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30315965)
臼杵 陽 日本女子大学, 文学部, 教授 (40203525)
山岸 智子 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (50272480)
嶺崎 寛子 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (50632775)
鷹木 恵子 桜美林大学, 人文学系, 教授 (60211330)
小林 寧子 南山大学, 外国語学部, 教授 (60225547)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イスラーム / ジェンダー / 家族 / イスラーム法 / フェミニズム / セクシュアリティ / 結婚 / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは、イスラームにとってジェンダー的な公正とは何か、という問題意識にもとづき、文化・政治・開発などにわたる諸問題を学際的に研究することを目的とする。また、これまで個別に行われてきた中東・イスラーム地域のジェンダー研究をまとめ上げ、かつ広範囲の研究領域にジェンダー視点を導入することにより「イスラーム・ジェンダー学」という新たな知的営為の基礎固めを行うことを目指す。 初年度である本年度は、まず年度初めに開催した全体集会において、研究プロジェクト全体の実施方針と具体的な研究課題について議論する機会を持った。それにもとづいて各研究分担者・研究協力者が個別課題の研究を進めるとともに、プロジェクト内公募の形を取り、7つのグループ研究を組織し、各グループが定期的に研究会を開催し、各課題の考察を深めた。また、国際セミナーとして海外の研究者を迎えて二つのセミナーを実施した。また、研究成果の社会還元を目指して、首都圏以外での公開セミナーを名古屋市にて実施した。さらに、各研究課題に関する調査と資料収集のため、トルコ、インドネシア、イランで海外調査を実施した(各1名)。イスラーム・ジェンダー学構築に向けてのプロジェクト全体の資料収集をとくにアラビア語文献(エジプト)と現代トルコ語文献(トルコ)について行った。ウェブサイトを開設し、研究会の通知やその紹介などの広報を行う体制を整えた。初年度の研究成果の一部として冊子『イスラーム・ジェンダー学の構築に向けて』を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度は、研究計画当初に課題として設定した9つの問題領域(「思想と表象」「法と規範」「家族と親族」「教育とイスラーム知」「開発と社会的公正」「政治と権力」「身体と医療」「移動と労働」「記憶と記録」)について、研究分担者・研究協力者が個別に研究を進めるとともに、それを踏まえて7つのグループ研究をプロジェクト内公募の手続きを取って組織した。①「砂漠の探究者」を探して(アル=ニサーイーヤート勉強会)、②開発とトランスナショナルな社会運動、③イスラーム・中東における家族・親族の再考、④フィールドから語るイスラーム、ジェンダー、セクシュアリティ、⑤イスラーム圏における「ジェンダー化された暴力/苦悩」、⑥国際ジェンダー規範とイスラーム、⑦イスラーム家族・女性関連法の運用実態の研究である。各グループが定期的に研究会を開催し、各課題の考察を深めた。これらの研究会の本年度の開催回数は12回であり、研究者のみならず、学生・大学院生・社会人を含む多くの参加者があった。 また、全体の企画として、キックオフ・シンポジウム(6月11日「イスラーム・ジェンダー学の構築に向けて」)に加えて、二度の国際ワークショップ(9月16日「ターリク・ラマダーン氏を迎えて」、3月8日「快楽の瞬間:現代カイロにおける時間、倫理、欲望」)と開催した。また、研究成果の社会還元を目指して、公開セミナー(3月11日「イスラーム社会における教育とジェンダー」)を名古屋市にて実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年次にあたる平成29年度は、概ね初年度の流れを踏襲する。6月に科研参加者が一同に会する全体集会を開催する。ここでは、現代世界で危急かつ重要な課題となっている「イスラモフォビア」を取り上げ、イスラーム・ジェンダー学がこれにどのようにアプローチし、取り組んでいけるかを考察する予定である。また、5月には米国のイスラームと女性を扱う研究者を招聘し、秋以降にはトルコおよびインドを拠点とするジェンダー史の専門家それぞれ一人ずつ招聘し、聖典解釈の流れを含む歴史的な視点と現代の問題をいかにつなげうるのかを考察する、国際ワークショップを開催する予定である。今年度の公開セミナーは「イスラーム社会における結婚とジェンダー」を主題として秋に北九州市で開催する予定である。ここではイスラーム法の運用実態の問題を主に扱う。 昨年度から続いている7つのグループ研究会は、いずれも2カ月に一度程度の頻度で開催されており、既存のものを今年度も継続するとともに、新しい企画研究会の公募も行う。加えて、5月の日本中東学会年次大会(九州大学で開催)では、科研参加者のうちの若手を中心としたパネル「イスラーム・ジェンダー学の未来――国家・宗教・セクシュアリティの重層性をめぐって」を計画している。ここでは、プロジェクトの主要課題の一つであるジェンダー視点からの政治・社会・文化研究の再検討の新たな道筋を示すことを目指す。そのほか、若手研究者への海外学会でのパネルおよび個人発表への参加支援も計画している。
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Research Products
(49 results)