2018 Fiscal Year Annual Research Report
啓蒙期の知的公共圏におけるフィクション使用の形態・機能研究
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16H01907
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 渉 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20314411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 将明 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10434177)
上村 敏郎 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (20624662)
菅 利恵 三重大学, 人文学部, 教授 (50534492)
久保 昭博 関西学院大学, 文学部, 教授 (60432324)
後藤 正英 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (60447985)
隠岐 さや香 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60536879)
大崎 さやの 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (80646513)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 啓蒙 / フィクション / 18世紀 / ヨーロッパ / 思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
a)理論的研究 3年目の理論的研究では、これまで検討してきた現代のフィクション概念を踏まえつつ、18世紀当時に見られたフィクション理論を再検討した。それらの多くは、素朴な作用・受容観を前提にしているが、その分、専門的知識人の議論にとどまらない広範な層の関心を集めている。とりわけ、 民衆への道徳的感化を想定した当時の議論は、フィクションと感情という問題と深く結びついている。 他方、こうしたやや楽観的なフィクション理解は、芸術固有の価値を信奉する知識人たちによって克服が図られることとなる。文脈の違いはあるが、18世紀と現代のフィクション理論には総体として相通ずる点も示していることが明らかになった。
b)歴史的研究 18世紀は、出版市場の発展にともない、文筆家の影響力が潜在的に高まった時代といえる。 このことはまた政府や教会の警戒を引き起こすことにもなった。拡大するコミュニケーション をコントロールする方策として、政治的・宗教的権威による文筆活動の制限、公的機関による検閲が実施され、少なからぬ知識人に脅威を与えている。だが、こうした制限はときにフィクションを含む別種の表現手段を選ばせ、結果的にはより広い範囲の関心を集めたり、発禁処分となった書籍が多様な流通経路を経てむしろ多くの部数につながっ たりすることもあった。検閲のあったことを資料的に確認することは困難であることも多いが、検閲の危険が書き手に与えた影響について考察をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、各自のテーマに関する研究を推進すると同時に、2019年7月エディンバラで開催予定の国際18世紀学会第15回国際会議へのエントリーに向けた準備を進めた。最終的に、以下の2つのセッションを企画し、応募した後、正式な採用の通知を受けた: 1)Enlightenment Style: Strategic Use of Fiction for Persuasion and Entertainment(久保、斉藤、後藤、大崎が担当、武田がチェア) 2)Imagined Identities: Fictional Production of Power, Value, Nature, and Nationality(上村、落合一樹、菅、武田が担当、斉藤がチェア) 本研究の最終目標の一つは、国際18世紀学会での成果報告であり、その準備が滞りなく進んでいることから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度となるため、アウトプットに主軸をおいた活動を目指す。 最も重要な活動として、7月の国際18世紀学会(エディンバラ)で開く2つのセッションで、共同研究メンバーがこれまでの研究成果を英語で発表する。限られた時間で効果的な成果発表とするため、事前の綿密な打ち合わせと相互の調整をおこなう。また、関連する他のセッションに積極的に参加し、相互の交流をはかる。英語ないし日本語で論集の刊行を目指す予定である。 また、それに先立つ6月の日本18世紀学会でも、研究代表者が長期にわたり準備してきた『ベルリン月報』のグロシンガー書簡について、18世紀の各方面の研究者たちを前にその成果を問う。 11月には、パリで開催される国際フィクション・虚構性研究学会(共同研究メンバーの久保昭博が共同代表を務める)の設立シンポジウムに参加し、フランソワーズ・ラヴォカ氏をはじめとする各国の研究者と情報交換や今後の共同研究に向け、交流をはかる。
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Research Products
(22 results)