2017 Fiscal Year Annual Research Report
高精細3Dデータ検証による東アジア四千年の青銅工芸・彫刻の造形美と技術の通史研究
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16H01918
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (20181969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長柄 毅一 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (60443420)
村田 聡 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (70219921)
三宮 千佳 富山大学, 芸術文化学部, 講師 (10454125)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 3D計測 / 厚み分布図 / 殷墟小屯遺跡 / 青銅器鋳型 / 久々利銅鐸 / 江戸中期大仏 / 尊 |
Outline of Annual Research Achievements |
4月から合計9回に渡り、江戸中期の千葉県市川市法華経寺大仏の解体修理にともなう体内調査をおこない、これまでその解明が不十分だった全製作工程を完全解明した。今後、研究公開促進経費に申請して成果を書籍発表する計画である。この成果を基に3月には都内の江戸六地蔵の外部調査を行い、法華経寺大仏を参考に製作技法をほぼ解明できた。 8月に台湾中央研究院歴史語言研究所が所蔵する中国安陽殷墟小屯遺跡出土青銅器鋳型を実見し、3D計測の必要性を見極めた。3月には日本から3D計測機を持ちこみ、小屯遺跡鋳型48点、青銅器19点を世界で初めて計測した。特に鋳型の形状には精密に鋳型を合わせる工夫が施され、これまでの青銅器調査だけでは分からなかった古代中国の技術水準が計れた。今後も継続して歴史語言研究所との国際共同研究を継続し、長く不明であった鋳型製作から組み合わせ、注湯までを明らかにすることとなった。これらの研究には伝統的鋳造技術者である本研究代表者が3D計測データを専用ソフトで加工して検証するために、多くの成果が期待できる。この手法で、東京国立博物館の青銅器を3D計測したデータから、考古学では長く意見が二分してきた戦国時代の山字文鏡の鋳造技法を論文発表した。 10月から2回、岐阜県可児市教育委員会が所蔵する久々利大型銅鐸の鋳造技術調査を行った。内面突帯が外面文様とずれていることなどを3d計測データから指摘した。 2月には泉屋博古館において商代後期のキ神壺などを3D計測し、青銅器の厚みの作り方を検証した。尊については全面を専用ソフトで厚み分布図を作成し、時代的な特徴を把握した、これまで青銅器の厚みに注目した研究はなく、それを得ることが不可能であったが、3D計測により、新規的な検討が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、古代から近代までの青銅器・仏像などの製作技術と造形の研究である。現代の手工芸技術よりも高度に発達した古代技法は、古代社会の青銅器需要が極めて高いためで、現代の技術をはるかに超えている。中には0.1ミリ以下の線文様で鋳造されたものもあり、肉眼観察で研究する手法には限界があった。研究が積み上がらなかったのは、共有できる科学的資料となる図がなかったためである。本代表者は、3D計測で現在可能な点間距離17ミクロンレンズで微細文様を計測し、断面図などを作製してそれを論文で提示して鋳造技術者として検証してきた。また3Dデータを共同研究者間で共有し、再検証できるようにした。現在3Dデータを研究自身がソフトで加工する例はほかにほとんど無く、少ない加工者として3D計測研究を普及してきた。これにより中国戦国時代のスタンプ文様の製作技術について、科学的資料を基に結論を提示した。研究者自身がデータを加工する段階に達した点において、計画通りに進展している。 現存する41体の江戸大仏には座高3mを超える大型があり、部品を現場で組み上げている。過去の修理時に体内調査を行い簡単な報告書が出されているが、今回の法華経寺大仏調査のように、鋳造技術者が時間をかけて全痕跡を記録し、体内外を3D計測して検証した最初となる。細部にわたり工程が完全解明できた江戸大仏の最初の例として、江戸時代の梵鐘や銅燈籠など大型青銅製品の生産体制にまで及ぶ研究の基礎が確立した。 戦前、中国安陽殷墟の小屯遺跡で出土した青銅器の鋳型は、蒋介石が台湾に移送し中央研究院歴史語言研究所に保管される。世界でも一級の資料として知られ、厳選した重要な鋳型を17ミクロンで計測したデータは今後の研究に大きな進展を与える。 法華経寺大仏の完全解明と小屯遺跡の鋳型3D計測において、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
台湾中央研究院歴史語言研究所と継続して小屯遺跡出土青銅器の3D計測による技法、造形研究を進める。中央研究院地球科学研究所の研究者と鋳型の化学成分分析を実施し、特に特殊成分について検討し、鋳型製作から鋳造までの工程をより具体的に明らかにする。さらに、鋳造実験をおこないその分析値との比較をとおして、検証を進める。 日本国内の青銅器、仏像の3D計測をすすめ、尊につづきユウやコなどの各種類別厚み分布を把握し、その特徴と時代的な変遷を検討する。 41体の江戸大仏のうち、未調査のものの調査を行い、全大仏の技術を解明し、時代的変遷と鋳物師別の特徴を整理し、書籍発表の準備を進める。 平成29年度の久々利銅鐸のように、修理を利用して内面まで3D計測する機会があれば積極的に調査をおこなう。
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Research Products
(9 results)