2017 Fiscal Year Annual Research Report
地域社会還元型の公文書活用システム構築に関する学際的研究
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16H01941
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
青木 睦 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (00260000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 聖文 国文学研究資料館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (70353414)
早川 和宏 東洋大学, 法学部, 教授 (30329354)
金山 正子 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (20311491)
魚住 弘久 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (60305894)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アーカイブズ学 / 歴史学 / 法律学 / 行政学 / 保存科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アーカイブズ学を結束点として歴史学・法律学・行政学・保存科学による学際的な連携を図り、短期的目的(自治体組織での管理)から長期的目的(市民への公開)まで応えうる市町村レベルに適合した公文書活用システムの構築を目的としている。 研究にあたっては、【第1目標】公文書の作成から保存・評価選別にいたる管理モデル研究、【第2目標】歴史資料としての公開モデル研究の2つの研究目標を設定した。 二年目である本年は、 【第1目標】では、東日本大震災、関東・東北豪雨、熊本地震で被災した14の行政機関を対象に、公文書管理の実態調査と公文書管理モデル(公文書管理条例試案)研究を実施した。さらに、既に公文書管理条例を施行、または特徴的な文書管理を運用している市町村レベルの自治体の実地調査を継続している。さらに、東日本大震災、熊本地震の震災アーカイブズ事業を調査し、市民ニーズにかなった公文書を含めた震災関連資料の公開について検証した。 【第2目標】では、プライバシー・個人情報に関する国際的取り組みの実態調査として、ヨーロッパデータ保護法の対象国であるイタリアへ赴き、アーキビスト・研究者より個人情報の運用実態の調査をおこなった。また、ヨーロッパデータ保護法案の対象国である北欧(デンマーク・フィンランド・スウェーデン・ノルウェー)へ赴き、各国の個人情報の運用実態の調査を行った。プライバシー情報の公開に関してヨーロッパとは姿勢の異なるアメリカ・カナダの国立公文書館・州立公文書館を実地調査し、現地アーキビストと協議の場を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの研究目標を担当する①管理モデル研究チームと②公開モデル研究チームの2チームの研究進捗は次の通りである。 ①管理モデル研究チームは、公文書のライフサイクルに応じた管理体制、評価選別による文書の保存・廃棄に関する現状について、文書管理システムの構築の緊要性が求められる東日本大震災、関東・東北豪雨、熊本地震で被災した行政機関に対して、実地調査を行った。今年度予定していたい全国の自治体(大規模災害が想定される地域、平成の大合併が行われた地域など)へのアンケート調査については、熊本地震で被災した自治体の公文書管理状況を緊急に調査する必要性が生じたため、2017年度に変更することとした。 ②公開モデル研究チームは、ヨーロッパデータ保護法案を日本の行政法の視点から検証しその運用実態を調査することにより、公文書活用システムの制度設計を最終目標に見据えた研究を着実に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と同様に、①管理モデル研究チームと②公開モデル研究チームで、研究分担を行いながら、本研究の成果として構築する公文書活用システムを社会へ還元するための調査・研究を継続推進する。 ①管理モデル研究チームは、市町村合併前の非現用文書から庁舎各課保管の現用文書にいたる公文書全体の管理状況、文書管理規程や保管廃棄の担当部課、保管上の設備的な問題点を問うアンケート調査を実施した。このアンケートを集計し、現在の各行政機関の文書管理状況を本研究の基礎データとして役立てる。さらに、既に公文書管理条例を施行、または特徴的な文書管理を運用している市町村レベルの自治体の実地調査を継続している。 ②公開モデル研究チームは、ヨーロッパデータ保護法案の対象国である北欧(デンマーク・フィンランド・スウェーデン・ノルウェー)へ赴き、各国の個人情報の運用実態の調査を行った。プライバシー情報の公開に関してヨーロッパとは姿勢の異なるアメリカ・カナダの国立公文書館・州立公文書館を実地調査し、「公文書に含まれる個人情報の機密性」に関しての議論が盛んに行われている米国アーキビストらと学術交流を図つた。 今後は、①管理モデル研究チームは、中間調査の報告を作成公開する。②公開モデル研究チームは、オーストラリアを調査し、これまでの調査結果を踏まえた報告を整理する。さらに、公文書活用システムの制度設計を最終目標に見据えた研究を着実に進めていく。
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