2017 Fiscal Year Annual Research Report
古代「仏都圏」の社会と文化に関する地域史的・比較史的研究
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16H01945
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 真司 京都大学, 文学研究科, 教授 (00212308)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菱田 哲郎 京都府立大学, 文学部, 教授 (20183577)
堀 裕 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50310769)
吉野 秋二 京都産業大学, 文化学部, 准教授 (50403324)
山本 崇 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (00359449)
吉江 崇 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (50362570)
河上 麻由子 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (50647873)
小澤 毅 三重大学, 人文学部, 教授 (00214130)
網 伸也 近畿大学, 文芸学部, 教授 (60708048)
田中 俊明 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (50183067)
井上 直樹 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80381929)
高 正龍 立命館大学, 文学部, 教授 (40330005)
向井 佑介 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (50452298)
上杉 和央 京都府立大学, 文学部, 准教授 (70379030)
藤岡 穣 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70314341)
上島 享 京都大学, 文学研究科, 教授 (60285244)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 仏都圏 / 古代地域史 / 古代寺院史 / 墨書土器 / 山林寺院 / 比較史 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)「仏都圏」古代寺院遺跡の検討:本年度は5回の検討会を開催した。河内国渋川郡・若江郡(渋川廃寺・由義寺跡)、摂津国八部郡(房王寺廃寺・大輪田泊跡)、播磨国加茂郡(古法華廃寺・吸谷廃寺・野条廃寺・殿原廃寺)、河内国安宿郡(青谷遺跡・河内国分寺跡)、河内国交野郡(須弥寺跡・長宝寺跡)についてである。いずれも現地調査機関の協力を仰ぎ、関連研究者に参加を募って「古代寺院史研究会」として実施した。本年度は畿内・近国における古代寺院と地域社会のつながりに注意し、国家権力との関係に起因する多様な地域性を把握した。検討会には研究分担者が毎回多数参加し、日本古代「仏都圏」の特質について議論を深め、認識を共有することができた。 (2)「仏都圏」古代寺院の事例研究:摂津国島下郡の忍頂寺について、今年度は竜王山山頂付近の測量調査と遺物散布調査を実施し、古代山林寺院の空間構造を広域的に解明した。忍頂寺に関わる近世文書の調査も進めた。また、伊勢国多気郡の古代寺院についても研究を開始し、本格調査に向けて現地踏査と地図資料調査を行なった。 (3)「仏都圏」関連史料の集成:本年度も3つの作業を継続した。京都大学で「仏都圏」古代寺院に関する史料の検索・データベース化を進め、向日市埋蔵文化財センターで長岡京出土墨書土器の釈文確定作業を行ない、さらに奈良文化財研究所で近畿圏の発掘調査報告書を検索して情報収集を続けた。 (4)海外調査:本年度は中国の古代寺院について遺跡調査を行なった。「仏都圏」概念が中国史において有効か否かを確かめるべく、鄭州・嵩山・洛陽・太原・五台山・大同の寺院遺跡を幅広く踏査し、広域の交通関係についても知見を深めた。来年度に予定されるジャワ調査についても準備作業を開始し、研究課題を明確にした。 (5)社会発信:研究メンバーは各地域における市民向け講演を積極的に行ない、研究成果の社会発信に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)「仏都圏」古代寺院遺跡の検討:検討会はほぼ計画通りに実施できた。今年度は「仏都圏」諸地域の様相と古代寺院の役割を具体的に考えた。由義宮と由義寺、竹原井頓宮と河内国分寺、百済王氏と交野郡諸寺など、「仏都圏」の最大の特色である権力中枢と地域社会・古代寺院との関係を、現地に即して考察・議論した。一方、「仏都圏」西部地域の遺跡の様相の把握にも努め、東部地域との比較が課題として浮上した。 (2)「仏都圏」古代寺院の事例研究:忍頂寺については、寿命院地区と並んで重要な場所と目される龍王山山頂の測量調査・遺物分布調査を行なったところ、9世紀代の遺物を発見することができ、古代山林寺院の空間構成を考える貴重な手がかりを得た。文献面では、忍頂寺に関わる近世文書がかなり遺存していることがわかり、まずはその概要を把握した。なお、本来は4年目に予定していた伊勢国神郡地域研究の準備作業として、現地踏査と地図資料調査を開始した。 (3)「仏都圏」関連史料の集成:研究計画通りに史料集成を進めた。特に長岡京出土墨書土器の釈文確定作業は、向日市埋蔵文化財センターと連携したもので、全国でも有数の出土点数を誇る墨書土器について調査をほぼ完了し、「仏都圏」中枢部の社会・文化状況を考える基礎作業とした。古代寺院関係史料や墨書土器の網羅的集成も順調に進んでいる。 (4)海外調査:古代~中世中国の都であった洛陽・太原・大同、およびその「仏都圏」と言えそうな嵩山・五台山の寺院遺跡を綿密に調査し、古代日本よりもずっと広大な仏教的ネットワークが展開していたことを確認した。なお、次年度に予定しているジャワの「仏都圏」調査に向け、有識者から教示を受けつつ、文献収集を開始した。 (5)社会発信:研究メンバーはそれぞれに、研究成果を書籍の形で発表するだけでなく、「仏都圏」各地域で市民向け講演を行い、社会発信に向けてたいへん努力した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに進めており、大きな問題はない。年間5回の遺跡検討会、忍頂寺・伊勢神郡地域寺院の調査、関連史料の集成、海外調査の実施を今年度に引き続き推進する。国内の発掘調査担当者や国外研究者との交流・提携が進んでおり、今後はいっそう発展させていきたい。 (1)「仏都圏」古代寺院遺跡の検討:平成30年6月に山城国愛宕郡(珍皇寺・法観寺・北白川廃寺)の検討会実施が決まっており、8月に近江国、10月には大和国を巡検する予定である。その後も発掘調査や遺物整理の進展を見きわめ、「仏都圏」認識に重要と思われる寺院遺跡を検討する。これらの検討会において、研究メンバーによる議論と認識共有を充実させる。 (2)「仏都圏」古代寺院の事例研究:忍頂寺の考古学調査・文献調査を継続する。遺跡の範囲を見定めた現時点において、重要地域について発掘を実施するとともに、中世以降の文献の検討を進め、「仏都圏」山林寺院の機能解明につとめる。また、当初の計画の順序を改め、30年度に伊勢国神郡地域、31年度に馬見丘陵地域について、古代寺院を中心としてそれぞれの地域性を明らかにし、「仏都圏」論に具体的な肉付けを施す。 (4)海外調査:「仏都圏」概念の有効性を検証し、日本古代史を比較史的に明らかにするため、平成30年度はジャワ、平成31年度は再び韓国の現地調査を実施する。ジャワ調査は、中国文化圏とは全く異なるインド文化圏において、「仏都圏」概念の有効性を検証する試みである。事前に古代ジャワ史を専門する研究者を招いて比較史の研究会を行ない、現地調査を実り豊かなものにするよう努める。 (5)社会発信:国内の調査機関と連携を密にし、市民向け講演をいっそう充実させることによって、「仏都圏」研究の成果を社会に発信していく。
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Research Products
(66 results)