2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H01946
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福田 千鶴 九州大学, 基幹教育院, 教授 (10260001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大賀 郁夫 宮崎公立大学, 人文学部, 教授 (00275463)
籠橋 俊光 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00312520)
東 昇 京都府立大学, 文学部, 准教授 (00416562)
東 幸代 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (10315921)
森田 喜久男 淑徳大学, 人文学部, 教授 (10742132)
渡部 浩二 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (20373475)
伊藤 昭弘 佐賀大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20423494)
堀田 幸義 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (20436182)
江藤 彰彦 久留米大学, 経済学部, 教授 (30140635)
兼平 賢治 東海大学, 文学部, 講師 (30626742)
安田 章人 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40570370)
水野 裕史 熊本大学, 教育学部, 講師 (50617024)
荻 慎一郎 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 教授 (60143070) [Withdrawn]
武井 弘一 琉球大学, 法文学部, 准教授 (60533198)
中澤 克昭 上智大学, 文学部, 准教授 (70332020)
岩淵 令治 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (90300681)
藤實 久美子 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (90337907)
相馬 拓也 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (60779114)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鷹 / 鷹場 / 環境 / 鷹狩文化 / 生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本列島において鷹を頂点とする生態系を維持するための環境条件が、いかなる相互作用のもとに保全されていたかという問題を解明するために、江戸時代に諸藩に設定されていた鷹場に着目し、鷹場環境を構成する個々の条件(環境因子)を政治・制度・文化・生活・空間などの視点から総合的に検討し、生物多様性を守り、持続可能な社会を維持するための確かな「知」を学際的な学術研究の立場から発信していくことにある。 近年、日本列島における環境破壊が深刻化し、その主たる要因を近代化過程に求めることが多いが、江戸時代に鷹場が環境維持に果たしてきた重要な役割が解明され、歴史的に位置づけられるようになれば、幕末に鷹場が全国的に廃止されたことが環境に深刻な影響を与えたことは一目瞭然となる。しかし、従来、日本列島を対象に、このような側面に着目した研究はなかった。よって、日本列島における鷹場や鷹狩文化のありようを解明しようとする本研究は、現代の環境を検討するうえでの示唆を与える重要な研究になることが意義として認められる。 5年間の研究計画では、4つの班を設定し、課題を解決する。まず、日本列島の植生差をふまえ西日本班と東日本班にわけ、全国諸藩に設定された鷹場について具体的に解明する。また、伝統文化班では日本の鷹狩文化の源流であるモンゴルとの比較、古代・中世の放鷹制の展開、そうした鷹狩の伝統が継承され、出版文化や鷹図・鷹狩図などの近世文化として展開する側面を解明する。生活・空間班では、鷹・鷹場が社会に与えた影響を多角的に分析する。鷹匠や鷹匠役人の身分・格式、狩猟技術、諸鳥や皮革の流通、献上儀礼、都市と村落の生活からみた鷹場とのかかわりなど、である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究計画の初年度にあたるため、共同研究の基盤作りを目標とした。まず、7月30日から8月1日かけて第1回研究会(福岡市)、1月3~5日に第2回研究会(東京都)を計画通り実施した。フィールドワークは、正月に予定していた浜離宮恩賜庭園で開催予定の諏訪流放鷹実演会の観覧が、鳥インフルエンザの影響で中止となったが、諏訪流放鷹術保存会の協力で本拠地青梅市での実演会を催してもらい、至近距離で鷹の据替や鷹の呼び寄せ等の実演をみることができ、期待以上のフィールドワークを実施することができた。 全国鷹場マップの作成は、研究者全員で分担を決め、全国の自治体史や研究論文の収集にあたり、ほぼ収集を終え、期待通りの成果をあげることができた。ただし、地域によっては情報の精度に濃淡があったため、鷹場マップの制作方法についての検討を必要としたため、これは平成29年度に具体化することにした。その点で課題を次年度に繰り越すことになった。 鷹・鷹場研究文献データベースは、1076タイトルの文献データを入力し、その90パーセントの文献を収集し、論文を中心にPDF化を終え、研究メンバーにUSBで配布した。これは研究史の整理に役立つだけでなく、文献を収集する労力を大幅に削減することに貢献している。絵画資料や書籍史料については情報収集段階にあり、PDF化は未着手となった。ただし、絵画情報については、研究報告を活字化することができたので、一程度の成果は達成できたと考える。 研究成果の公開としては、メンバーの協力のもとHPを作成し、研究代表者の所属する九州大学基幹教育院において公開している。また、年度末には『鷹・鷹場・環境研究』創刊号を公刊し、関係機関(者)に送付を終えた。NEWS LETTER『鷹・鷹場と環境NEWS』を23号まで刊行し、情報の共有化をはかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究活動は、フィールドワークを重視する。平成28年度に実施した諏訪流放鷹術の実演会でも、実際の放鷹の様子を実見し、鷹匠から鷹狩の実際を聞き取りすることで、多くの知見を得ることができた。よって、平成29年度はメンバーの有志でモンゴル調査に出向き、日本の放鷹術の源流とされる鷲使いを実地見分する予定である。また、平成28年度の研究会活動により、古代・中世の鷹狩の獲物は雉であったが、江戸時代の鷹狩では鶴を最上の獲物とするよう変化したことや、鷹で鶴をとることの難しさなどが明らかとなったため、平成29年度の国内フィールドワーク先としては、鹿児島県出水市川内のツル飛来地を候補に変更したい(ただし、鳥インフルエンザの影響で実施できない場合が想定されるため、臨機応変にフィールド先を変更することも視野に入れておきたい)。 平成29年度からは、個人研究においては本年度の文献調査によって分析対象が明確化したので、その論文執筆のための資料収集を進める。研究代表者は、研究協力者の協力をあおぎながら、引き続き鷹・鷹場文献データベースの入力、論文PDF化、全国鷹場マップの作成をおこなう。また、絵画資料のPDF化を重点的にはかり、共同研究の基盤をさらに整備する。 研究成果の公開としては、平成29年度はこれまでのNEWS LETTER を研究に特化した内容を改訂し、年2回(4月、10月)の定期発行とする。年度末には『鷹・鷹場・環境研究』第2号を刊行し、九州大学機関リポジトリに登録する。また、NEWS LETTERをHPにUPするなど、HPのさらなる充実化をはかり、一般へも情報を発信する。研究会メンバーの所属する博物館における展示活動や講演会活動にも協力する。
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Research Products
(21 results)