2016 Fiscal Year Annual Research Report
歴史社会学の理論・実証の蓄積の再構築と新しい研究教育法の開発に関する総合研究
Project/Area Number |
16H02040
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 健二 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50162425)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤川 学 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (10273062)
出口 剛司 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40340484)
米村 千代 千葉大学, 文学部, 教授 (90262063)
宮本 直美 立命館大学, 文学部, 教授 (40401161)
祐成 保志 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (50382461)
中筋 由紀子 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (60303682)
野上 元 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (50350187)
武田 俊輔 滋賀県立大学, 人間文化学部, 講師 (10398365)
東 由美子 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任講師 (00307985)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 歴史社会学 / 方法論 / 社会学史 / 公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は「歴史社会学」の研究の蓄積を網羅し、その存在形態と、それがどのように論じられ認識されてきたかを把握するという基礎作業を中心に研究会活動を進めた。 とりわけBourdieu 風に表現するなら「歴史社会学のメチエ(経験に根ざす職人的な方法知)」とも呼ぶべき方法論に裏付けられた実践的な社会学的想像力について、それぞれの研究フィールドから素材を出しあった。なかでも、戦後社会学をリードしてきた作田啓一や見田宗介の著作についての検討などにおいては、研究者の資質・方法の違いもさることながら、時代や世代の文脈をたんねんに把握することの重要性など、今後につながる論点を多く提出された。戦後日本の社会科学を再出発であった政治学者らの軍国主義の精神構造や天皇制国家の分析についても、同時代の「思想の科学研究会」の戦争期や戦後社会の現実分析や、社会学のなかで固有に展開した「近代化」論の試みなどをにらみつつ位置づけてみると、見田宗介の「社会心理史」や「存立構造論」などを、あらたな歴史社会学的分析として意味づける視座がえられる。 いわゆる社会史のインパクトを受けて、1990年代あたりから簇生するようになった、ライフヒストリーやエスノグラフィーを名のる社会学の歴史把握についても検討を進めているところである。 社会学方法論および社会調査論のテクストにおける歴史性の把握もひとつの課題であったが、本年度は戦争社会学の領域において検討を進め、合宿の研究会として成果としての「教科書」についての素案を練り上げた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本共同研究が具体的にとりくむのは、「①多様な展開をしめした近代日本における「歴史社会学」の理論と実証の成果を、その理論枠組みの特質や方法論的な問題点もふくめて一覧できる学史的なデータベースを構成すること」であったが、問題の検討は順調に進んでいると評価できる。 その一方でデータベースをどう作成していくかという具体的な課題に関しては、「②系譜の厚みの検討のなかから、Bourdieu 風に表現するなら「歴史社会学のメチエ(経験に根ざす職人的な方法知)」とも呼ぶべき方法論に裏付けられた実践的な社会学的想像力を立ちあげる能力を、社会学の今後の研究法の教育に活かすこと」という課題との関連において、まだ準備段階にとどまっており、今後の推進の仕方を研究会でも議論したい。 さらに「③資源の共有をつうじて、その世界史的な意義を明確にするなかで、広い意味で「社会問題」あるいは社会の危機に対処する知として構築されてきた社会学の存在意義を現代において示すこと」という目的に関しては、作田啓一と見田宗介の二人をとりあげた連続シンポジウムにおいて、一般にも歴史社会学の新たな意義について発信しており、こうした活動は次年度も続ける予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
あいまいに使われてきた「歴史社会学」の概念や方法意識の再検討を、そうした情報の蓄積の創造・共有とともにおこなっていく。また「歴史社会学論」を中心とした学会誌特集やシンポジウムでの議論が収斂しがちな、理念的な定義の外枠設定だけをむやみに優先させない、本共同研究の戦略を活かした研究科活動を続ける予定である。 論文にまとめられた研究や報告書から漏れてしまった視点も、「実践史」という立場からすれば、注意深く拾いあげていく必要があろう。現段階では例示でしかないが、たとえば 1)近代日本で実施された社会調査の報告書の前提となっている地域の歴史性の分析、2)戸籍に始まり国勢調査等にいたる官庁における社会把握の歴史社会学的な位置づけ、3)社会学方法論および社会調査論のテクストにおける歴史性の把握、4)フィールドワークや聞き書きでとらえられてくる歴史の説明の報告書への繰り入れ、5)社会学研究で使われた視覚資料(地図、写真など)など、多岐にわたる領域を検討したい。研究代表者が『社会調査史のリテラシー』(2011)のなかでまとめた地域社会調査史の発掘などは、方針を決めていく際のひとつのヒントになる。 最終年度までに作成する成果としての専門性の高い入門書やハンドブックの作成方針も、データベースの作成と並行して検討を進めたい。とりわけ、①研究グループ内での実験的なデータベースの作成にむけた作業手順の明確化と試行、②それらの実現に資するであろう専門技術者との相談や仕様の確定といった、技術的・設備的な基盤を形成するとともに、③資料の具体的な処理・加工が作業として入ってくると考えている。
|
Research Products
(22 results)