2018 Fiscal Year Annual Research Report
歴史社会学の理論・実証の蓄積の再構築と新しい研究教育法の開発に関する総合研究
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16H02040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 健二 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50162425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤川 学 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10273062)
出口 剛司 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40340484)
祐成 保志 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (50382461)
米村 千代 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (90262063)
宮本 直美 立命館大学, 文学部, 教授 (40401161)
中筋 由紀子 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (60303682)
武田 俊輔 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (10398365)
野上 元 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (50350187)
佐藤 雅浩 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (50708328)
東 由美子 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任講師 (00307985)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歴史社会学 / 方法論 / 社会学史 / 公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
三年目の研究プロジェクトにおいて大きく進んだ方向性として、2点をあげることができる。 一つは、昨年度事業の繰り越し実施で行われたオーストラリアのアデレードでの国際研究交流集会などを踏まえて、メディアの歴史的・現代的変容と深く関係させつつ社会学研究の方法論を再検討する必要を掲げる本研究の、国際的な意義の検討が進んだことである。とりわけ、日本社会だけでなく、グローバルな現代社会の変容において、その観察・記述・分析において社会学がいかなる方法論的なツールを開発しえているのかを反省的に捉えなければならない課題が浮かびあがってきた。その方法論的な意義をもつツールには、「AI」というマジックワードで括られてしまっているものを含めたさまざまな電子テクノロジーが包含されていると同時に、感性や言語を内蔵した調査者/被調査者の身体もまた含まれる。いわば、グローバルであると同時にローカルな課題が明らかになりつつある。 二つ目に、この研究プロジェクトの成果として、力を入れて進めてきた「教科書」と位置づけうる入門書もしくはハンドブックの作成が軌道に乗りつつあることである。「歴史社会学」への招待として、いかなる解読の想像力が歴史社会学と論じうるのかを、いくつかの主題・テーマ・専門領域においての研究者自身の解説において提示するとともに、蓄積されてきた資料やデータをどのように活用しうるかという「ハンドブック」的・実践的な性格についても、工夫が検討された。研究代表者が本年度の実績のひとつとしてまとめた『文化資源学講義』は、実際には歴史社会学的な発想で貫かれており、基礎理論編において「文化」「資源」「情報」といった概念の基礎を根底から問いなおし、演習・実習編では具体的な対象である「新聞錦絵」や「万年筆」といった事物を取りあげ、分析をどう立ち上げるかを論じている。「教科書」構想の参考となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
何度かの研究会における検討を通じて、研究当初の第2課題である「コモンズとしての蓄積の再編成」のひとつに位置づけられる教科書・ハンドブックの内容については、大きく進んだといえるだろう。具体的には「歴史社会学への招待」「歴史社会学入門」「歴史社会学的想像力の諸相」「さまざまな歴史資料・データ」という仮タイトルの4部構成において、主題テーマ、先行研究の古典、資料論などを幅広く押さえた執筆の要項の検討が進んだ。具体的な執筆の分担についても、調整が進みつつある。 「コモンズとしての蓄積の再編成」のもうひとつに位置づけられるデータベースの構築については、一昨年度に展開した「作田啓一と見田宗介」の連続シンポジウムを受けて、研究者個人という括りにおいて整理活用できる資料共有の試行的な実験が進んでいる。具体的には作業を進めてきて、文献目録レベルでも筆名・匿名の処理や、改訂の関連づけなど、共有における課題が浮かびあがってきており、今後の研究会での検討が待たれる。また主題データベースについても、研究代表者が取り組んだ「浅草十二階」ケーススタディを踏まえた検討が進んでいる。 「歴史社会学の理念と方法の再構築」という研究の第1課題については、研究会活動を通じて着実に進めつつある。研究代表者・研究分担者による論文での公表にまで至っているものは少ないが、これまで統合的に描かれていない日本社会学史に資する研究が進められている。とりわけ、戦後における日本の社会学の展開については、その欠落が近年多くの研究者から指摘されており、それらを補う知識の蓄積と参照が共有されなければならないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえ、それぞれの持ち場での研究を進めるとともに、研究会活動を継続することで、ひきつづき「歴史社会学の理念と方法の再構築」と「コモンズとしての蓄積の再編成」に取り組んでいく予定である。データベース型の公共化を進めるにあたって、技術的・システム的な展望を得られるような活動と同時に、「公共圏」という理念等とのすりあわせも必要ではないかと考えている。 また昨年度来ひとつの主題となってきている、個人に焦点をあてた資料データベースが抱える問題点や文字テクストや画像データ等々の資料群の公開・共有の形態などについては、専門家を招いた研究会などの工夫が必要であろう。いずれも、具体的な資料の処理にもとづいた議論が必要であると考えており、抽象的な原理や技術に留まるものではないだろうと見込んでいることから、これまで蓄積してきた資料群にもとづく作業を推進していきたい。 研究の国際的・社会的な拡がりについては、本年度は必ずしも研究プロジェクト全体での海外での研究交流にはこだわらず、日本におけるさまざまな歴史的な展開を視野に入れる形での研究展開を考えてみたい。もちろん、分担者それぞれの研究活動を含め、国際的な展開を軽視するものではない。
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Research Products
(25 results)