2017 Fiscal Year Annual Research Report
多肢選択肢における回答行動の統合的研究:質問紙・ウェブ調査法の設計と妥当性の検討
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16H02050
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
坂上 貴之 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (90146720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 真也 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 准教授 (80291285)
竹村 和久 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10212028)
椎名 乾平 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60187317)
広田 すみれ 東京都市大学, メディア情報学部, 教授 (90279703)
木村 邦博 東北大学, 文学研究科, 教授 (80202042)
山田 一成 東洋大学, 社会学部, 教授 (80230449)
吉村 治正 奈良大学, 社会学部, 教授 (60326626)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 評定尺度 / 公理的アプローチ / 眼球運動 / マウスの2次元軌跡データ / 潜在クラス回帰モデル / Visual Analogue Scale / 不良回答 / ニューメラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下の諸研究を行った。 (1)前年度に引き続き心理学者キャントリルによる古典的研究の意義を検討した。また、評定尺度の源流を明らかにし、質問紙における評定法の公理的条件についての理論的考察と、実験的検討を行った(基底班)。(2)Web調査の重要パラデータである回答時間の特性を明らかにするために、回答中断行動の実態について調査を行った。不良回答の検出法とその減少のための試みなどについて学会報告を行った。回答ボタンのデザイン(ダイヤル型や五角形型の配置)やVisual Analogue Scale (VAS)におけるページ移動ボタンの配置を操作し回答行動に与える影響を調べた。また、スプリット法を用いた公募型Web調査(パネル調査)を実施し、 VASの再検査信頼性の評価に必要なデータを収集した。選択肢レイアウト効果や質問順序効果を検討するためにWeb調査を実施し、基礎集計を終え、多変量解析による分析の準備が整った(形式班)。(3)様々な意思決定場面における視線データの取得法や分析法、実験結果について学会発表をした。一方、Web調査への回答を想定した実験室実験で視線データを取得し分析を行ったが、不正回答の検出に利用できる結果には至っていない。注視データと合わせてマウスの軌跡を取得する実験プログラムを開発した(注視班・軌跡班)。(4)標本抽出フレームの異なる二つの調査(住民基本台帳と調査業者の登録モニター)を実施し、カバレッジ(網羅誤差)だけでなく、非回答誤差も大きな問題になることを明らかにした(Web班)。(5)numeracyの低い回答者の極端選択の忌避が認知処理の深さによるものであるかを検討するため、Web調査で様々な尺度水準の質問を同一回答者に行い、中間選択傾向や極端選択の忌避傾向を比較した。その結果、尺度水準による極端選択の忌避傾向に違いがあり、Likert型の設問ではnumeracyの違いが回答傾向に反映されやすいことが明らかになった(認知処理班)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質問紙や評定尺度に関する古典的研究をたどることによって、質問紙調査の源流を明らかにすることができた。また、調査デザインや標本抽出の方法が回答行動、集計結果に与える影響について明らかにし、不良回答や非回答誤差の問題について様々な知見が得られた。 文献調査、Web調査、実験室実験によるこれまでの研究成果は、学会発表および雑誌論文で発表を行っており、日本行動計量学会第45回大会においては、特別セッション「Web調査における回答行動の検討」を企画し、研究成果の報告を行うとともに、参加者と議論を行うことができた。 これまでの研究成果を踏まえた次の調査、実験に関する準備も整えられていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の研究を予定している。 (1)これまでの調査により、評価尺度の源流が19世紀のGaltonやFechner、1900年代以降の教育評価、1920年以降の社会調査、まで遡れることが明らかになってきたことから、さらに深耕したい。評価行動についての公理的アプローチおよび計量心理学的検討に基づいて公理を新しく見出し、眼球運動測定法や過程追跡技法により分析を行う(基底班)。(2)設問数が多い場合に設問や選択肢に対する注視時間がどのように変化していくかについて分析を行う。また、Visual Analogue Scale(VAS)によって設問に回答する際の眼球運動パターンを測定し、分析を行う(視線班)。(3)マウスカーソルの軌跡データをDynamic Time Warping法を用いて解析する方法論を開発する(軌跡班)。(4)Web調査における、調査画面デザイン(設問や選択肢の順序と位置、回答法)、多義的な言葉や難解な用語の影響について、これまでに行った調査結果のデータの分析を行う。また、これまで実施したスプリット調査の群間の等質性について、回答分布、項目間相関・偏相関などを指標として検討する。VASとリッカート尺度の再検査信頼性についても検討を行う。これらの知見を踏まえて新たなWeb調査を実施する(形式班)。(5)回答を行う際に、選択肢の位置や順序が回答行動にどのように影響するのかを、尺度の種類(正解のある設問、順序性の弱い設問など)および回答者の客観的・主観的numeracyの点から過去のWeb調査結果を分析する。(認知能力班)。(6)Web調査へ回答するという意思決定において金銭的なインセンティブがどのように作用しているかを検討することで、回答者の構成の偏りがもたらす回答の偏りを低減する方法を模索する(Web班)。 複数の学会内でのシンポジウムを企画し、そこで研究結果の報告を行う。平成31年1月に研究者以外の関心層の参加も目指して、最終シンポジウムと総括会議を行う。
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Research Products
(36 results)
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[Book] 行動分析学2018
Author(s)
坂上 貴之、井上 雅彦
Total Pages
328
Publisher
有斐閣
ISBN
4641221022
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[Book] Quantitative Psychology: The 82nd Annual Meeting of the Psychometric Society, Zurich, Switzerland, 20172018
Author(s)
Shiina Kenpei、Ueda Takashi、Kubo Saori (編集: Wiberg, M., Culpepper, S., Janssen, R., Gonzalez, J., Molenaar, D.)
Total Pages
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Publisher
Springer International Publishing
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