2019 Fiscal Year Annual Research Report
高大接続改革の下での新しい選抜方法に対する教育測定論・認知科学・比較教育学的評価
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16H02051
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
倉元 直樹 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (60236172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安野 史子 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター基礎研究部, 総括研究官 (00370081)
鈴木 雅之 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (00708703)
内田 照久 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 教授 (10280538)
並川 努 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (10613721)
椎名 久美子 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 教授 (20280539)
大澤 公一 京都大学, 高大接続・入試センター, 特定准教授 (20555320)
木南 敦 京都大学, 法学研究科, 教授 (30144314)
西川 浩昭 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (30208160)
石井 光夫 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (30375175)
西郡 大 佐賀大学, アドミッションセンター, 教授 (30542328)
泉 毅 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (30828447) [Withdrawn]
小松 恵 岩手医科大学, 看護学部, 特任講師 (50781895)
鈴木 誠 北海道大学, 高等教育推進機構, 教授 (60322856)
本多 正尚 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60345767) [Withdrawn]
脇田 貴文 関西大学, 社会学部, 教授 (60456861)
小浜 明 仙台大学, 体育学部, 教授 (70170298)
林 篤裕 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70189637)
大谷 奨 筑波大学, 人間系, 教授 (70223857)
吉沢 豊予子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80281252)
島田 康行 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90206178)
宮本 友弘 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (90280552)
山本 以和子 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (90293521)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高大接続改革 / 教育測定論 / 思考力・判断力・表現力 / 大学入学共通テスト / 学力の3要素 / 教育心理学 / 主体性評価 / 大学入試センター試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年12月発表の中教審答申(高大接続答申)は、大学入学者選抜制度に抜本的改革を迫るものであった。具体的には学力の3要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学ぶ態度」)の全てを大学入試で測定することを目指し、令和3年度入試からセンター試験を廃止して大学入学共通テスト(新共通テスト)が導入されることとなった。ところが、実施直前の昨年末になって英語4技能測定のための英語民間試験の導入と「国語」「数学Ⅰ・数学A」で導入予定であった記述式問題が撤回され、節目を迎えることとなった。本研究計画を開始するにあたって指摘していた「不安」が開始前に現実のものとなってしまった。 本研究では教育心理学をはじめとして様々な分野から学問的英智を集め、刻々と変化する入試改革の状況に即応する研究を目指して研究活動を進めてきた。初年度からウェブサイトを通じて研究成果を発信してきたところ、政策転換が行われた時期には相当数のアクセスがあり、一部の研究成果は国会でも議論の材料として取り上げられるに至った。実証的なエビデンスを示して政策的議論に寄与したという意味では「刻々と変容する高大接続改革の内実に即応しながら,新旧の大学入学者選抜方法について学術的見地から比較分析を加え,個別大学の選抜制度設計に資する知見を見出す」という当初に掲げた目標の達成には相当程度近づいてきているものと考える。 5年間の研究計画の3年度に当たる平成31年度において中間報告書を刊行し、研究組織を組み替えたことも、転換期における即応性に寄与したと考えられる。また、令和元年度においては、ここまでの研究成果の一部を用いた学術書(東北大学大学入試研究シリーズ 『大学入試センター試験から大学入学共通テストへ』)が刊行された。不確定要素が大きい時期にあって、本研究の成果が認知される機会を作ることができたのが、ここまでの成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は5年間の研究計画の4年度目に当たり、最終まとめに近づく年であることを意識しつつ、研究計画を遂行した。 本研究は、当初から、刻々と変化する高大接続改革の内実に即応しながら、新旧の大学入学者選抜方法に学術的見地からの比較分析を行うことを最大の特徴として掲げている。したがって、取り組むべき研究課題は状況に応じてある程度柔軟に変化することが当初から視野に入っていた。当初から懸念されていたことであるが、高大接続改革が必ずしも順調に進まず、昨年末、改革が実行に移される直前に方向転換したことから、本研究が担うべき社会的意義は益々大きくなったと考えている。 本年度から「比較教育学的問題評価(比較教育)班」を「歴史学・比較教育学的問題評価(歴史・比較教育)班」に「認知科学的問題評価(認知科学)班」を「認知科学的・教育心理学的問題評価(認知科学・教育心理学)班」に、「調査書分析(調査書)班」を「主体性等評価(主体性)班」へと再編し、研究を進めてきた。2月に令和元年度第1回研究会(通算第5回研究会)を開催し、研究の進行状況を確認したところであるが、実情に合わせた組織の再編は有効に機能したと評価している。 高大接続改革の状況が予想の範囲を超えて劇的に変化してきていることから、本研究に与えられた5年間で、果たして研究を終了させて良いかどうかという問題が浮上している。そこで、本研究の発展的形象を試みるため、研究組織を組み直した上で、「研究計画最終年度前年度応募」の制度を用いて新たに基盤研究(S)の申請を試みることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究計画最終年度前年度応募」の制度を用いて、基盤研究(S)に応募した。本来であれば、第1次審査の結果が終わっているはずだったが、2月頃から突然巻き起こった新型コロナウイルス感染症拡大のため、現在、緊急事態宣言が全国に発せられている。そのため、審査が中断を余儀なくされ、現在、採否の状況が不明である。したがって、採択となった場合と不採択となった場合の2通りの推進方策を立てておく必要がある. 申請中の基盤研究(S)は、タイトルが「高大接続改革に貢献する個別大学の入試方法の研究――主として受験生保護の観点から――」というものである。高大接続答申では、個別試験における学力検査を縮小し、いわゆる「主体性評価」に特化することが構想されていた。ところが、その後の展開から、いわゆる学力の3要素の一つ「思考力・判断力・表現力」も含めて、わが国独自の制度である各大学が課す個別試験の役割に改めて注目が集まるようになってきた。さらに、これまでの改革論議の中で、一番の当事者である受験生の立場が必ずしも十分に賢慮されてこなかったことから、「受験生保護」の観点に焦点を当てた研究計画を企図している。研究組織も研究テーマごとに組むと同時に、国公私立の各セクター及び我が国の教育研究を担うべき研究機関からバランスよく研究分担者を人選し、5年間で研究を遂行する計画である。 上記の研究計画が採択されなかった場合には、本研究の当初の研究計画にしたがって、総括と研究成果の発信に注力する。元来は様々な学会を通じて研究成果発表を行う予定であったが、多くの学会が新型コロナウイルス感染症の影響を受けて中止となっている。代替の手段として、オンラインの成果発表企画等が考えられるが、可能性を探っているところである。なお、本科研費による研究が継続する場合には、最終年度も本研究の成果としての学術書の出版を試みる。
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Research Products
(2 results)