2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H02209
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中辻 知 東京大学, 物性研究所, 教授 (70362431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 猛 東京大学, 物性研究所, 准教授 (40613310)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トポロジー / 反強磁性 / ワイル半金属 / フラストレート磁性 / ホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
反強磁性状態において、トポロジカルな効果を示す、ワイル金属状態を実現することを目指し、Mn3X系とパイロクロア型イリジウム酸化物の単結晶の電子輸送現象の研究を行った。まずは、ワイル半金属において期待されるホール伝導度と異常ネルンスト効果の測定を行った結果、Mn3SnとMn3Geにおいて、反強磁性体においてはじめて異常ホール効果と異常ネルンスト効果を観測した。また、Mnの組成をチューニングすることでフェルミエネルギーを調整できることを光電子分光と電子計算との比較から解明し、ワイル点の近傍で期待される特徴的な組成依存性を解明した。このことは、Mn3Snがフェルミエネルギーの近傍にワイル点を持つことを示している。一方で、この系における時間反転対称性の破れは、ホール効果やネルンスト効果だけでなく、カー効果の発現の可能性を強く示唆する。実際、縦カー効果の測定の結果、室温で10 mili-degree程度のカー効果の測定に成功した。このことは、金属における反強磁性ドメインの可視化の成功にもつながった。パイロクロア型イリジウム酸化物においては、ミューオンによる測定からall-in all-outになる転移の臨界現象の観測に成功した。この測定からその秩序が遍歴磁性の特性を示し、理論的に期待されているワイル磁性体の発現の舞台として考えられることを明らかにした。また、光電子分光の測定から、この磁気転移において現れる絶縁体状態が転移点直下ではスレーター型として現れ、最低温度ではモット型へクロスオーバーしていくことを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
反強磁性体のワイル磁性体の新規物性を明らかにすることを目標としてきたが、それを実際に実現した。たとえば、異常ホール効果や異常ネルンスト効果を反強磁性体において初めて観測することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
Mn3Snにおいては、ワイル点を運動量空間で可視化することを目標として、光電子分光を行う。さらに、ワイル点のカイラル異常による磁気抵抗効果の発見を目指すと同時にその磁気抵抗効果の組成依存性から、ワイル点とフェルミエネルギーとの関係によるカイラル異常の変化を解明にする。さらに、カー効果を用いて、ワイル反強磁性体のドメイン構造の解明を行う。また、電流を印加すると同時にカー効果にて磁壁の動きを観察することで、電流による磁気状態の制御を行う。パイロクロア型イリジウム酸化物においては、薄膜の作製をおこない、基板に基づく歪を面内に起こすことで、立方対称性を破った状態を安定化する。さらに、低温に冷やすことで磁気秩序状態を実現し、そこで期待されるワイル半金属状態での自発的なホール効果の観測を目指す。また、その磁気抵抗の異方性から希土類元素の磁気モーメントがつくるクラスター多極子状態を解明する。
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[Journal Article] Spin Polarization and Texture of the Fermi Arcs in the Weyl Fermion Semimetal TaAs2016
Author(s)
S-Y Xu, I. Belopolski, D. S. Sanchez, M. Neupane, G. Chang, K. Yaji, Z. Yuan, C. Zhang, K. Kuroda, G. Bian, C. Guo, H. Lu, T-R. Chang, N. Alidoust, H. Zheng, C-C. Lee, S-M. Huang, C-H. Hsu, H-T. Jeng, A. Bansil, T. Neupert, F. Komori, T. Kondo, S. Shin, H. Lin, S. Jia, M. Z. Hasan
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Journal Title
Physical Review Letters
Volume: 116
Pages: 1-7
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] BaKFe2As2の超伝導状態における反強的電子構造2017
Author(s)
下志万貴博, Walid Malaeb, 近藤猛, 木方邦宏, 李哲虎, 伊豫彰, 永崎洋, 石田茂之, 中島正道, 内田慎一, 大串研也, 石坂香子, 辛埴
Organizer
日本物理学会 第72回年次大会
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[Presentation] キラルな結晶構造を有するテルル単体のバンド構造の観測2017
Author(s)
坂野昌人, 平山元昭, 高橋敬成, 明比俊太朗, 中山充大, 黒田健太, 宮本幸治, 奥田太一, 小野寛太, 組頭広志, 三宅隆, 村上修一, 笹川崇男, 近藤猛
Organizer
日本物理学会 第72回年次大会
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[Presentation] 角度分解光電子分光で観測するCd2Os2O7の電子状態2017
Author(s)
中山充大, 近藤猛, 廣瀬陽代, 黒田健太, Balleile C dric, 坂野昌人, 明比俊太朗, 野口亮, 國定聡, 広井善二, 辛埴
Organizer
日本物理学会 第72回年次大会
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[Presentation] 高次高調波レーザーを用いたフェムト秒時間分解ARPESによる銅酸化物高温超伝導体Bi2212の準粒子ダイナミクスの直接観測2016
Author(s)
岡田大, 岡崎浩三, 鈴木博人, 山本貴士, 染谷隆史, 小川優, 笹川崇男, 近藤猛, 藤澤正美, 金井輝人, 石井順久, 板谷治郎, 辛埴
Organizer
日本物理学会 2016年 秋季大会
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